概要
施工管理・現場監督という職業は、どうしても年功序列の要素が強くなります。
以下のような理由から、どうしても経験年数がものを言うためです。
- 事業構造上、イテレーションのサイクルが長い
- 「強くなる方法は、実務経験によってしか得られない」という性質が強い
- 教育訓練も、雇用主主導で行わなければならない
- 法制度上も、実務経験の期間が重要視されている
この記事では、上述の事柄について記述してきます。
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↑「イテレーションのサイクル」等についての言及です。
建設業は、長期の請負契約に基づくビジネスです。
特に土木構造物・オフィスビル・インフラ施設のような大規模なプロジェクトの場合、プロジェクトの期間が数年~十数年となる場合も存在します。
それだけに、事業着手から成果が出るまでには長い時間を要する1ことになります。
Webプロダクトにおける「1ヶ月~数ヶ月」とは大きな差ですね。
イテレーションのサイクルが長いため、「職業人として通用するレベルの経験を積むために必要な期間」も長いものとなってきます。
従事者の平均経験年数も長いものとなってきます。
年功序列の要素が強くなる原因の一つですね。
「強くなる方法は、実務経験によってしか得られない」という性質が強い
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施工管理で必要とされる以下のようなスキルは、実務経験によってしか得ることができない性質のスキルです。
- 職人や協力会社の活用法
- 顧客を安心させるテクニック
- 工程管理のテクニック
- 協力会社を値切るテクニック
各スキルはプロジェクトごとに個別性が強く、体系化が困難で、どうしても属人性が強いものとならざるを得ません。
Web開発などとは異なり、業務外で勉強することが構造上不可能なのです。
「強くなる方法は、実務経験によってしか得られない」「成果を出すためには実務経験が必要である」となってくると、「評価体系が成果主義ベースでも、成果を挙げるために年齢(経験)を重ねなければならない」という現実に直面することとなります。
年功序列の要素が強くなる原因の一つですね。
教育訓練も、雇用主主導で行わなければならない
上記「強くなる方法は、実務で経験を得ることによってしか得られない」という特徴に由来する現実です。
「職場外の教育訓練により蓄積可能なスキル」には、宿命的な限界が存在するのです。
「実務経験が求められる」となれば、当然「実務経験を積むことができるのは職場のみ」という話になってきます。
建設業のような、「事業を行うにあたって許認可が必要となる事業」となればなおさらです。
「教育訓練を雇用主主導で行う」となると、雇用主と被雇用者との間に、以下のような関係性がどうしても発生してきます。
- 雇用主と被雇用者との間の貸し借り
- 被雇用者の雇用主に対する負い目
年功序列の要素が強くなる原因の一つですね。
法制度上も、実務経験の期間が重要視されている
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主任技術者や監理技術者といった、建設現場全体のリーダーレベルの職位につくためには、(建設業内の業種にもよりますが)施工管理技術検定に合格して施工管理技士の資格を取得する必要が出てきます。
施工管理技術検定の受験そのものも、一定の期間の実務経験が必要とされます。
2級施工管理技術検定の第2次検定受験には、原則1年~8年(学歴により異なる)の実務経験が必要となります。
また、1級施工管理技術検定の第2次検定受験には、以下の実務経験が必要となります。
- 3年~15年(学歴により異なる)の実務経験
- もしくは、2級第2次検定合格から5年の実務経験
- いずれも「1年以上の指導監督的実務経験」を含む必要がある
- 下記「実務経験に基づく監理技術者の選任」とは異なり、「請負代金4500万円以上の元請工事」という要件はないとみられる
一方で、施工管理技術検定が存在しない業種の場合、主任技術者や監理技術者の選任要件は実務経験年数によるものが主流となります2。
- 主任技術者になるためには、3年~10年(学歴等により異なる)の実務経験が必要
- 監理技術者になるためには、3年~10年(学歴等により異なる)の実務経験が必要
- 「請負代金4500万円以上の元請工事における、2年以上の指導監督的実務経験」を含む必要がある
権限と責任のある職位につくために、実務経験が必要とされる。
年功序列の要素が強くなる原因の一つですね。