today::エンジニアに憧れる非エンジニア

今のところは、エンジニアとは言えないところの職種です。しかしエンジニア的なものの考え方に興味津津。

オフィスレイアウトの問題地図

ひな壇席の存在
ひな壇席の存在
「上司は偉い」
意識の増強
「上司は偉い」 意識の増強
管理・監視
第一主義
管理・監視 第一主義
オープンレイアウト
オープンレイアウト
プライバシー
侵害の想起
プライバシー 侵害の想起
仕事の中断の
助長
仕事の中断の 助長
必要以上に
同僚に
話しかけやすい
必要以上に同僚に話しかけやすい...
上位者の席に
高級な家具を
割り当てる
上位者の席に高級な家具を割り当てる...
マネジャー層の
メンバーに
対する不信
マネジャー層のメンバーに対する不信...
職場の
労働生産性低下
職場の 労働生産性低下
必要以上に
他人の会話が
耳に入りやすい
必要以上に他人の会話が耳に入りやすい...
集中の阻害
集中の阻害
メンバーの
マネジャー層に
対する不信
メンバーのマネジャー層に対する不信...
役割と序列の
混同
役割と序列の 混同
ハラスメントの
発生
ハラスメントの 発生
従業員同士の
差異の強調
従業員同士の 差異の強調
ダイバーシティ/ 反インクルージョン
対外的な
企業イメージの低下
対外的な 企業イメージの低下
収容効率
第一主義
収容効率 第一主義
従業員が
モノ扱い
されているように
感じる
従業員がモノ扱いされているように感じる...
狭すぎる
個人あたりの
スペース
狭すぎる個人あたりのスペース...
異質な者を
受け入れないことによる
機会損失の発生
異質な者を受け入れないことによる機会損失の発生...
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「対向島型のオープンレイアウト、役職者が座るひな壇席が存在し、役職者にはより高級な家具が割り当てられる」といった「典型的な日本のオフィスレイアウト」の問題地図です。「典型的な日本のオフィスレイアウト」は、以下のような問題につながっていきます。

  • ハラスメントの発生
  • 異質な者を受け入れないことによる機会損失の発生
  • 対外的な企業イメージの低下
  • 職場の労働生産性低下

「役職は役割であって序列・身分ではない」「従業員のプライバシーや音環境を考慮しない職場はストレスの原因」…これからオフィスを作るにあたっては、このような事柄は念頭に置いた上でレイアウトを組み立ててほしいものです。

さん/くんシステムの問題地図

年齢/入社年次で
人の呼び方が違う
年齢/入社年次で 人の呼び方が違う
誰をどう呼ぶかが
相手によって違う
誰をどう呼ぶかが 相手によって違う
年齢/入社年次の
差異の強調
年齢/入社年次の 差異の強調
生産性と
無関係の部分で
労力を費やす
生産性と無関係の部分で労力を費やす...
呼び方を間違える
リスクがある
呼び方を間違える リスクがある
年上の後輩/
年下の先輩に
対応できない
年上の後輩/年下の先輩に対応できない...
年齢と入社年次の関係の
暗黙的な決めつけ
年齢と入社年次の関係の 暗黙的な決めつけ
ダイバーシティ/ 反インクルージョン
中途採用者に
対応できない
中途採用者に 対応できない
職位の流動化への
対応が困難
職位の流動化への 対応が困難
異質な者を
受け入れないことによる
機会損失の発生
異質な者を受け入れないことによる機会損失の発生...
人事制度の
硬直化
人事制度の 硬直化
不健全な自己愛の
植え付け
不健全な自己愛の 植え付け
年齢/入社年次の
序列意識の植え付け
年齢/入社年次の 序列意識の植え付け
目下と判断した者に対する
尊大な振る舞い
目下と判断した者に対する 尊大な振る舞い
従業員のストレス
従業員のストレス
ハラスメントの発生
ハラスメントの発生
社内での関係性が
変化した際に
呼び方を変える
必要がある
社内での関係性が変化した際に呼び方を変える必要がある...
社内人間関係の
硬直化
社内人間関係の 硬直化
目下と判断した者と
一緒に働くことへの
抵抗感
目下と判断した者と一緒に働くことへの抵抗感...
中高年の
労働生産性低下
中高年の 労働生産性低下
対外的な
企業イメージの低下
対外的な 企業イメージの低下
年功序列
年次管理の
慣習化
年功序列/年次管理の慣習化...
従業員同士の
不信感
従業員同士の 不信感
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バブル期頃からの伝統のある日本企業なら根強く残っているであろう「さん/くんシステム」には、突っ込んで考えていくとこれだけの問題を引き起こすものです。

  • 人事制度の硬直化
  • 社内人間関係の硬直化
  • 異質な者を受け入れないことによる機会損失の発生
  • 対外的な企業イメージの低下
  • 中高年の労働生産性低下
  • 従業員のストレス
  • ハラスメントの発生

自分だけでも「周囲の人は全員さん付けで呼ぶ」という習慣を貫きたいものです。

「さん/くんシステム」とは

「さん/くんシステム」とは、以下の呼び分けが無意識的に行われるような職場の人間関係の不文律を指します。

  • 年上/新卒入社年次が前の人には「さん付け、敬語」
  • 年下/新卒入社年次が後の人には「タメ口」
  • 年下/新卒入社年次が後の男性には「くん付け」

以下の記事において、「さん/くんシステム」とその問題点について突っ込んだ解説がなされています。

diamond.jp

通信建設業界の問題地図

高いNTT依存度
高いNTT依存度
NTTグループからの
転籍者を受け入れる
慣習
NTTグループからの...
新卒入社の従業員の
経営参加が困難
新卒入社の従業員の 経営参加が困難
NTTファミリー
としての意識の存在
NTTファミリー...
全国転勤の存在
全国転勤の存在
発注動向の
地域的偏り
発注動向の 地域的偏り
発注がなければ
仕事もない
発注がなければ 仕事もない
付加価値ベースの
労働生産性
改善されない
付加価値ベースの労働生産性が改善されない...
異質な人材が
出てこない
異質な人材が 出てこない
NTTグループ外からの
中途採用がない
NTTグループ外からの...
良質な新卒人材が
集まらない
良質な新卒人材が 集まらない
労働集約意識が
根強い
労働集約意識が 根強い
人力土工の
必要
人力土工の 必要
都市化が進んだ地域への
インフラ構築の必要
都市化が進んだ地域への インフラ構築の必要
業界構造に
変化の余地がない
業界構造に 変化の余地がない
NTT~通建会社、
通建会社同士の
縦横のつながりが強い
NTT~通建会社、...
通信事業は
巨大な設備産業
通信事業は 巨大な設備産業
発注者は
巨大/
特定少数
発注者は巨大/特定少数...
不規則な働き方の
存在
不規則な働き方の 存在
仕事中心の生活を
強いられる
仕事中心の生活を 強いられる
従業員の
家事参加が困難
従業員の 家事参加が困難
既存設備を
いじる必要
既存設備を いじる必要
複雑な調整の
必要
複雑な調整の 必要
仕事に対する
満足度が低い
仕事に対する 満足度が低い
発注者優位の
力関係
発注者優位の 力関係
発想力が貧困
発想力が貧困
現状に疑問が
持たれない
現状に疑問が 持たれない
何が問題なのか
わからない
何が問題なのか わからない
中途採用者も
同質性が高い
中途採用者も 同質性が高い
現状が
改善されない
現状が 改善されない
通建事業自体が
成長余地に乏しい
通建事業自体が 成長余地に乏しい
通信事業者の
設備投資動向への
強い依存
通信事業者の設備投資動向への強い依存...
自力改善は
困難
自力改善は 困難
人が寄り付かない構造が
固定化する
人が寄り付かない構造が 固定化する
企業の成長展望を
描けない
企業の成長展望を 描けない
成長事業に
的確に投資できない
成長事業に 的確に投資できない
通信インフラは
あらかた完成されている
通信インフラは あらかた完成されている
中途採用者が
寄り付かない
中途採用者が 寄り付かない
高齢化/
同質化が進む
高齢化/ 同質化が進む
多様な働き方に
対応できない
多様な働き方に 対応できない
僻地勤務の存在
僻地勤務の存在
工事対象の
ユニバーサル
サービス性
工事対象のユニバーサル サービス性
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NTT東西発注の元請工事を受注し請け負う事業者を想定した問題地図です。様々な理由により、「新卒にせよ中途にせよ、外から人が寄り付かない→高齢化・同質化が進む→様々な問題は改善されない→人が寄り付かない構造が固定化する→新卒にせよ中途にせよ、外から人が寄り付かない→以下ループ」という事態が発生しています。どう変えていきましょうか。

公共工事の問題地図

着想 - 地方都市の問題地図

note.com

本記事の着想元となった、沢渡あまね氏発表の「地方都市の問題地図」です。

実物 - 公共工事の問題地図

地域雇用の
土建業依存
地域雇用の 土建業依存
地域土建業の
公共工事依存
地域土建業の 公共工事依存
1.「地方だから」
「製造業だから」
1.「地方だから」...
(追加)
「土建業だから」
(追加)「土建業だから」...
住民の
政治不信
住民の 政治不信
地域土建業と
政治の癒着
地域土建業と 政治の癒着
公共投資に対する
住民の無知・無理解
公共投資に対する 住民の無知・無理解
改善されない
道路インフラ
改善されない 道路インフラ
3.下請け思考
3.下請け思考
2.横並び主義
2.横並び主義
談合により
仕事を回す
談合により仕事を回す...
固定的な
勤務体系
固定的な 勤務体系
土建業の特性
現地生産
労働集約
土建業の特性現地生産・労働集約...
地域政治の
土建業依存
地域政治の 土建業依存
ITや改善にも
投資しない
ITや改善にも...
問題や理不尽に気づかない/
放置する
問題や理不尽に気づかない/ 放置する
土建業の
イテレーション
長さ
土建業のイテレーションの長さ...
6.井の中の蛙
土建業の
変化しない
産業構造
土建業の変化しない産業構造...
知識労働の軽視
知識の安売り
知識労働の軽視知識の安売り...
8.見えないものを評価しない/
お金を出さない
8.見えないものを評価しない/...
指名競争入札
非常に少ない
創意工夫の余地
非常に少ない 創意工夫の余地
地元同規模事業者のみでの競争
地元同規模事業者のみでの競争
代わり映えしない
メンバー
代わり映えしない メンバー
行政の
無謬性神
行政の 無謬性神
気合・根性主義
気合・根性主義
契約軽視/
契約不完備
契約軽視/契約不完備...
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上図は、以下のツイートの内容をさらに再検討・要素追加等行ったものです。

なぜこんなものを描いたか

大都市圏以外の都市圏、および非都市的地域においては、「公共工事を主たる収益源とする建設業が地域の主要産業となっている」というケースが多々あります。ここでの「主要産業」というのは、「地域の経済活動」「地域の雇用の担い手」という意味にかかるものです。

公共工事が経済活動の主役となっている地方都市が少なからず存在する以上、「地方都市の問題地図」を描くにあたり、公共工事に関する問題を無視することはできません。ゆえに、元々の「地方都市の問題地図」のパーツにつなげる形で「公共工事の問題地図」を描いた、という次第です。

意味についてさらに解説

指名競争入札の帰結

日本の公共事業における入札ランク制度は、「低ランクの事業者が入札に参加することを禁止する制度」であるのみならず、「高ランクの事業者が入札に参加することを禁止する制度」でもあります。大手事業者がその規模に比べて小規模の工事の入札に参加することはできません。また、指名競争入札を採用する大きな理由として、「地元事業者以外の排除」という要素があることは否定できません。ゆえに、「指名競争入札」は「地元同規模事業者のみでの競争」という帰結に至るわけです。

また、指名競争入札において同一地域・同一規模の工事の入札に参加するメンバーは大体同じとなるので、その分談合もやりやすくなるわけです。

行政の無謬性神話に関して

行政の無謬性神話から気合・根性主義に至るまで

公共工事において行政の無謬性神話が表向き成り立っているように見せるためには、「契約を不確実なものとし、受注者にしわ寄せを押し付ける」という手法が取られます。契約にはない事柄が押し付けられるので、受注側は気合・根性で解決しなければならなくなります。

渡邊法美氏の講演資料わが国の公共工事入札・契約制度改革に関する一考察を解釈すると、具体的には、以下のような要素がしわ寄せの対象となります。

  • 膨大な工事量を年度内に完工させる→未確定な顧客要求
  • 会計検査に対して無難に対応する→過確定な現場生産性向上手段
  • 不確定な設計図書変更対応
  • 不確定な施工の監理形態および監理形態

また、「過確定な現場生産性向上手段」の帰結として、「非常に少ない創意工夫の余地」という問題が発生します。

行政の無謬性神話から契約軽視/契約不完備に至るまで

渡邊法美氏の講演資料わが国の公共工事入札・契約制度改革に関する一考察の文中には、以下のような記述があります。

薄井は、「日本において行政に対する期待、逆に言えば、行政が自己に課している行政責任には、よく引き合いに出されるアメリカとは異なるものがある。それは、およそ工事が投げ出されるとか極端な疎漏工事などは絶対にあってはならないという考え方である。事後的な損害賠償の議論などは、行政責任を重視する立場からすれば、ほとんど意味のないことなのである。工事の完成についての完璧主義と言ってよい。」と述べ、…

このような考え方のもとでは、「紛争解決手段の定義や受注側の請求権について、十分に網羅性のある契約」「契約のデザインによる仕事の進め方の形成」といったあり方は実現しようがありません。ゆえに、「契約軽視/契約不完備」という帰結に至るわけです。

NTT加入者線路設備工事の実施設計は、こんなことを考えて行われている

加入者線路の実施設計とは

下記記事に詳細を記述しています。

rapidliner0.hatenablog.com

本記事の前提条件

rapidliner0.hatenablog.com

本記事で対象とする実施設計は、NTT東西のサービス総合工事における実施設計を想定しています。例えば以下のような工事が含まれます。

  • 既存加入者線路における支障移転1
  • 既存加入者線路設備の増強、縮減
  • 中小規模集合住宅・中小規模オフィスビル・中小規模商業施設等への引込設備の新設
  • 既存の不良設備や不安全設備の更改

一方で、以下のような通信設備工事の実施設計は、本記事の記述対象とはしません。

  • NTT東西以外の通信事業者の通信設備工事
    • 移動体通信の通信設備工事も、本記事の記述対象ではない
  • 面的広がりを持った地域に対するNTT加入者線路設備の新規導入工事
    • このような工事については、NTT東西の場合、「一般計画工事」「簡易総合工事」といったスキームで発注がなされる
  • 大規模集合住宅・大規模オフィスビル・大規模商業施設等への引込設備の新設
    • このような工事については、NTT東西の場合、「一般計画工事」「簡易総合工事」といったスキームで発注がなされる
  • 自治体発注による加入者線路設備の新設
    • 「IRU工事」と言われる種類の工事である

加入者線路の実施設計で求められる要素

加入者線路の実施設計には、「複数工事への対応」「経済性を意識した設計」「安全性を意識した設計」といったテーマを総合的に反映することが求められます。

複数工事への対応

サービス総合工事には、上述「本記事の前提条件」で触れたように、多種多様な工事が含まれます。発注者たるNTT東西は、通建会社による実施設計に対し、複数工事を同時に施工することによる付加価値の提案を求めています。

経済性を意識した設計

NTT東西は、昨今「メタリック加入者線路設備の縮減」を設備構築の主要な方針としています。このような大まかな方針に基づき、NTT加入者線路設備の実施設計に対しては、以下の細かな方針が示されています。

  • 今後使用される見込みのない設備は撤去する
  • 新築建造物等でメタリック加入者線路設備の新設が必要な場合、その規模は最小限とする

NTT東西も経済活動を行う実態である以上、最小限の投資で最大限の成果を出すことが求められます。「加入者線路設備工事の実施設計」という範囲でいえば、例えば「支障移転工事で電柱の建て替えが必要となる場合、建て替え後の電柱の本数が最小となるようにする」といった具合です。

安全性を意識した設計

「人身事故リスクを最小限にする」という命題は、設計段階から考慮しなければなりません。例えば以下のような要素が含まれます。

  • 高所作業は、可能な限り高所作業車を使う
  • 交通量の多い道路、歩行者の多い歩道等の存在を考慮する

周辺で設備更改等が発生する場合、危険のある老朽設備等の更改も同時に行うことが求められます。「周辺設備の更改」そのものは工事注文書には含まれませんが、「通建会社裁量の提案」として評価されます。

法律上求められる安全要件は、当然満足されなければなりません。NTT加入者線路設備工事においては、「架空通信設備の地上高要件を満足するような電柱更改」が主なテーマとなることが多いです。

実例「アクセスデザインコンテスト2021」における設計課題

※この部分の記述については、前提となる「アクセスデザインコンテスト2021における設計課題」が、情報通信エンジニアリング協会Webサイト上で非公開となったため削除しました。


  1. 道路工事等の理由による設備移転工事です。

フレームワークやベストプラクティスと、旧来日本製造業型組織は相容れないものである

参考文献

本記事の内容は、以下の記事を参考文献としています。

note.com

フレームワークやベストプラクティスは、公的なオーソライズにそぐわない

フレームワークやベストプラクティスは、事業者が事業活動のマネジメントを進めていく上で効果的とされる手法をまとめたものです。しかしながら、これらの考え方は、公的なオーソライズにはそぐわない性格のものとなります。公的なオーソライズにそぐわない理由は以下です。

  • その手法を規定することが困難である
  • 以下の要素を規定するのが困難である
    • 何を適用して何を適用しないのか
    • どのようなリスクを許容するのか
    • どれだけのリスクを許容するのか

これら「規定することが困難な内容」について、事業者自らが解析を行い、リスクが大きくなる原因を認識して対策を取る…フレームワークやベストプラクティスの意義はそこにあります。土橋律氏が「リスク管理は自主管理向きの手法である」と述べたのと同様に、「フレームワークやベストプラクティスは自主管理向きの手法」なのです。

旧来日本製造業型組織において、フレームワークやベストプラクティスを適用しようとすると何が起こるか

土橋律氏は、日本の製造業等における安全管理の考え方について、以下のような風潮があると言及しています。

安全上の対策について、法令や基準など公的にオーソライズされたものに従うことで事業者の安全確保の責務を果たしたと考える

旧来日本製造業型組織でそのままフレームワークやベストプラクティスを適用しようとすると、どうしても「フレームワークやベストプラクティスを無理やりオーソライズして、組織は『オーソライズされたものに従う』という体裁を取る」というアプローチにならざるを得ません。

かくして、沢渡あまね氏が言及するような「フレームワークやベストプラクティスに『使われて』しまう」という帰結に至るわけです。過去の「ISO認証の取得や更新をめぐり、各所で繰り返されるドタバタ劇→ISO認証が競争参加の要件とされないセクションにおけるISO認証の返上ラッシュ」などとも似たようなものを感じますね。

フレームワークやベストプラクティスを真に意味あるものとするために

土橋律氏は、「リスクによる安全管理を導入していくために必要なもの」として以下のように記述しています。

リスクによる安全管理を導入していくためには、まずはリスクの概念に対する正しい認識を関係者が持つことが必要である。そのためには、リスクの概念の正しい情報提供が不可欠である。リスク評価の講習や解説書などが最近増えているが、手法を学ぶ前にリスクの概念と既往の安全の考え方との違いについてしっかり認識することが肝心であると考えられる。

私個人としては、上述「リスクによる安全管理」を「フレームワークやベストプラクティス」と言い換えるなら、以下の内容になるのではないかと思います。

また、土橋律氏は、「安全の自主管理の重要性に対する認識」について以下のように記述しています。

オーソライズされた法令や基準にすべて適合していても、事故が発生してしまえば事業者は責任をのがれられない。自主管理は当然必要であり、対策の優先順位や目標設定が客観的に実施できるリスクを用いた安全管理の有用性についても理解が深まるはずである。

私個人としては、上述の言及をフレームワークやベストプラクティスに適用するならば、以下の内容になるのではないかと思います。

  • オーソライズされた法令や基準にすべて適合していても、インシデントが発生してしまえば、事業者(およびその事業活動について責任を持つ者)は責任をのがれられない
  • 事業運営全般にあたっての自主管理は当然必要である
  • 「事業運営の自主管理」という考え方についての理解が深まれば、フレームワークやベストプラクティスの有用性についても理解が深まるはず

地域経済のリモート化を妨げるもの…公共工事依存の官製市場

きっかけ…地域経済のリモート化を妨げるもの

以下は、沢渡あまね氏執筆のnote記事「地方都市の中小企業こそデジタルワーク・オンラインワーク・テレワークを!」です。

note.com

この記事を読んで、個人的に「地域経済のリモート化を妨げるのは、公共工事依存の官製市場が地域経済の根幹をなしていることが大きな原因であろう」と考えました。以下解説です。

「地域経済のリモート化」と相容れない「公共工事依存の官製市場」

日本において「地方企業のリモート化」ないしは「地域経済のリモート化」を実現するためには、「地域の産業構造の転換」が必要となるケースが多いと思います。理由は以下の通りです。

  • 大都市圏以外の地域の場合、地域経済が公共工事に大きく依存しているケースが少なからず存在する
  • 「官製市場では、働く人・企業のリモート化の実現はおぼつかない」という事実を受け入れなければならない

公共工事依存の官製市場」において、主役となるのは建設業です。建設業は、その事業性質上、(少なくとも現状においては)リモート化に物理的限界があります。ゆえに、現状成立している「公共工事依存の官製市場」は、「地域経済のリモート化」とは相容れないものです。

また、リモート化が容易な業種は、事業環境の不確実性が高く、「官が事業環境・市場構造をコントロールするのは非現実的である」というのを前提としなければなりません。その意味でも、「公共工事依存の官製市場」と「地域経済のリモート化」は相容れないものです。

なぜ「公共工事依存の官製市場」が続いてきたのか…官側から

公共工事依存の官製市場」は、官側にとって政策立案・実行が大変楽ちんな市場です。理由は以下の通りです。

  • 官が事業環境・市場構造をコントロールするのが容易である
  • 事業者に対し、官が事業内容を統制することが可能である

建設業というのは、建設業法を根拠法規とする許認可事業であり、官が許認可の権限を有する事業です。また、建設業に対する官による具体的統制手段として、「経営事項審査制度」や「入札ランク制度」といったものが存在します。さらに、官は発注金額・発注タイミング等を通じ、「公共工事依存の官製市場」の市場規模や繁閑もコントロールできます。

「地域経済そのものが談合で成り立っているのではないか」という疑念

地域経済が「公共工事依存の官製市場」で成り立っている地域には、「地域経済そのものが談合で成り立っているのではないか」という疑念があります。そのような疑念を持つに至る原因としては、以下のような事柄があります。

  • 外部事業者に対する排他的な姿勢
  • 下請事業者に対する「俺らが養っている」という意識の存在
  • 内部事業者が外部に進出しようとしない姿勢

「外部事業者に対する排他的な姿勢」は、「非競争を実現するための、内部事業者同士の結託」の原因となります。談合の主な原因の一つですね。

元請事業者が下請事業者に対して「俺らが養っている」という意識で接していると、下請事業者側も「特定の元請事業者に養われている」という意識を持ってしまいがちです。また、「下請事業者を養う」という意識は、「下請事業者を養うために、安定的で確実な受注が必要である」という考え方にもつながります。「安定的で確実な受注」を実現するための手っ取り早い手段、それが「談合」というわけです。

「内部事業者が外部に進出しようとしない姿勢」は、以下のような状況が主な原因と考えられます。

  • 現状に最適化されすぎた組織構造、事業マインド
  • 事業組織全体として、市場分析・マーケティング等の能力が欠如している

「今までの市場環境がぬるま湯にすぎたため、ぬるま湯の環境でしか生きていけなくなり、外部に進出しない・したくてもできない」…という帰結ですね。

まとめ

  • 大都市圏以外の地域経済は、「公共工事依存の官製市場」に依存している場合が少なくない
  • 公共工事依存の官製市場」は、「地域経済のリモート化」とは相容れない
  • 公共工事依存の官製市場」は、官にとって維持・運営がこの上なく楽である
  • 公共工事依存の官製市場」で成り立つ地域経済には、「事業者が談合マインドで、地域経済そのものが談合によって成り立っている」という疑念が発生する

地域経済も「脱公共工事依存・脱統制・脱談合」でいきましょう!

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