きっかけ…地域経済のリモート化を妨げるもの
以下は、沢渡あまね氏執筆のnote記事「地方都市の中小企業こそデジタルワーク・オンラインワーク・テレワークを!」です。
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この記事を読んで、個人的に「地域経済のリモート化を妨げるのは、公共工事依存の官製市場が地域経済の根幹をなしていることが大きな原因であろう」と考えました。以下解説です。
「地域経済のリモート化」と相容れない「公共工事依存の官製市場」
日本において「地方企業のリモート化」ないしは「地域経済のリモート化」を実現するためには、「地域の産業構造の転換」が必要となるケースが多いと思います。理由は以下の通りです。
- 大都市圏以外の地域の場合、地域経済が公共工事に大きく依存しているケースが少なからず存在する
- 「官製市場では、働く人・企業のリモート化の実現はおぼつかない」という事実を受け入れなければならない
「公共工事依存の官製市場」において、主役となるのは建設業です。建設業は、その事業性質上、(少なくとも現状においては)リモート化に物理的限界があります。ゆえに、現状成立している「公共工事依存の官製市場」は、「地域経済のリモート化」とは相容れないものです。
また、リモート化が容易な業種は、事業環境の不確実性が高く、「官が事業環境・市場構造をコントロールするのは非現実的である」というのを前提としなければなりません。その意味でも、「公共工事依存の官製市場」と「地域経済のリモート化」は相容れないものです。
なぜ「公共工事依存の官製市場」が続いてきたのか…官側から
「公共工事依存の官製市場」は、官側にとって政策立案・実行が大変楽ちんな市場です。理由は以下の通りです。
- 官が事業環境・市場構造をコントロールするのが容易である
- 事業者に対し、官が事業内容を統制することが可能である
建設業というのは、建設業法を根拠法規とする許認可事業であり、官が許認可の権限を有する事業です。また、建設業に対する官による具体的統制手段として、「経営事項審査制度」や「入札ランク制度」といったものが存在します。さらに、官は発注金額・発注タイミング等を通じ、「公共工事依存の官製市場」の市場規模や繁閑もコントロールできます。
「地域経済そのものが談合で成り立っているのではないか」という疑念
地域経済が「公共工事依存の官製市場」で成り立っている地域には、「地域経済そのものが談合で成り立っているのではないか」という疑念があります。そのような疑念を持つに至る原因としては、以下のような事柄があります。
- 外部事業者に対する排他的な姿勢
- 下請事業者に対する「俺らが養っている」という意識の存在
- 内部事業者が外部に進出しようとしない姿勢
「外部事業者に対する排他的な姿勢」は、「非競争を実現するための、内部事業者同士の結託」の原因となります。談合の主な原因の一つですね。
元請事業者が下請事業者に対して「俺らが養っている」という意識で接していると、下請事業者側も「特定の元請事業者に養われている」という意識を持ってしまいがちです。また、「下請事業者を養う」という意識は、「下請事業者を養うために、安定的で確実な受注が必要である」という考え方にもつながります。「安定的で確実な受注」を実現するための手っ取り早い手段、それが「談合」というわけです。
「内部事業者が外部に進出しようとしない姿勢」は、以下のような状況が主な原因と考えられます。
- 現状に最適化されすぎた組織構造、事業マインド
- 事業組織全体として、市場分析・マーケティング等の能力が欠如している
「今までの市場環境がぬるま湯にすぎたため、ぬるま湯の環境でしか生きていけなくなり、外部に進出しない・したくてもできない」…という帰結ですね。
まとめ
- 大都市圏以外の地域経済は、「公共工事依存の官製市場」に依存している場合が少なくない
- 「公共工事依存の官製市場」は、「地域経済のリモート化」とは相容れない
- 「公共工事依存の官製市場」は、官にとって維持・運営がこの上なく楽である
- 「公共工事依存の官製市場」で成り立つ地域経済には、「事業者が談合マインドで、地域経済そのものが談合によって成り立っている」という疑念が発生する
地域経済も「脱公共工事依存・脱統制・脱談合」でいきましょう!
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