概要
エンジニアの登壇を応援する会主催の発表会です。タイトルのごとく、アウトプットがテーマでした。…ものすごいボリュームと熱量。聞けてよかった数々の話。こうして書いてみて改めて気づきました。
アウトプットとは
ariakiさんの発表より。
無意識的なアウトプット
- 日常会話、対話
- メール、チャット
- 電話
こういった言語的コミュニケーションは、無意識的なアウトプットの一種なのだそうです。確かに、言われてみなければアウトプットの一種だとは考えませんよね。しかしながら、受け取り側に何らかの影響を与えるものであるというのは、言われてみれば確かにそうです。
また、言語的コミュニケーション各手段の好き嫌いというのも、その人の価値観というのが出てくるのではないかと思います。少なからぬエンジニア・頭脳労働者の方々は、電話などの同期型コミュニケーション手段を取ることを、明確な理由がない限り避ける…そういう感じのやつです。
- どのようなサービスを開発提供するか
- 日々の何気ない行動、しぐさ
- 何にお金を使うか
こういったものもまた、無意識的なアウトプットの一種であるそうです。よくよく考えてみれば、立ち居振る舞いにも価値観って現れるものなのですよね。人間興味も必要性も楽しさも感じないことをしようとは思わないですし…
アウトプットをコントロールする
言葉、立ち居振る舞い、感情表現…そういった無意識的なアウトプットをコントロールすることにより、自分を形作ることができる(超訳)
「人のせいにばかりする人には、そのうち誰も寄り付かなくなる」という趣旨の発言は、私もよく聞きます。一方で、場の和を乱さまいとして自分を過度に押さえつけるのも、きっと不健全な習慣です。適切に柔軟である、ということは心がけていきたいと思います。
アウトプットによって自分の現在を整理する
私自身は、人間の記憶は思った以上にあてにならないものであると考えています。記憶のみに頼ってしまっては、自分自身もどこかあやふやなものになってしまう。自分自身があやふやになってしまうと、他者依存の人生しか送ることができなくなる。自分の現在を言語化して外に出すことによって、人生の主体性の礎を作る…そういうことなのだろうと思います。
アウトプットによって自分の未来を予測する
実績の評価・分析・修正。次の目標設定。周囲を巻き込む・集まる。なかなか耳の痛い話です。周囲を巻き込む・集めることができている人が周囲にいる一方、自分自身ではそれができていない…そうなるとなかなかきついものであるような気がします。けれども、気がつくことにまず意味があるのだろうし、周りに助けを求める道もある…そう信じたいです。
結局、何のためにアウトプットするのか
- 周囲に影響を与える
- 現在を整理する
- 未来を予測する
- 自分が望むことを正しく伝える、認識される
言わなきゃ認識されない、ということに意識が行かない。周りがどう受け止めるかに不安を持ってしまう。…そういうところは、私自身が改善すべき点であるように思います。それを乗り越えないと、現状の言語化もできないわけですし、未来を予測することもできないわけですし。
今日からアウトプットを始めよう
speakerdeck.com フリーランスエンジニア・えるきち氏による発表です。組織のバックボーンを持たない、アウトプットが全てである世界に生きる人による発表なだけに、その中身には重みがあります。
アウトプットは誰でもできる
免許も資格も要らない。下手くそでもアウトプットできる場がたくさん用意されている。今の時代を的確に表した、まさしく至言です。
二昔くらい前、インターネットがここまで普及する前の時代であれば、何らかの組織的背景を持たない個人が全世界に向けてアウトプットするというのは困難でした。しかしながら、SNSが一般的となった今の時代においては、個人が全世界に向けてアウトプットすることは、あの頃に比べてぐっと容易なのです。アウトプットで人生を変えたいという人にとっては、本当に良い時代になったものです。
バズがバズを呼ぶ、というのだろうか
アウトプット、そして間違っていない方向の工夫や改善。こうしたことを続けていれば、確かにどこかのタイミングでバズるときが来る。そのような流れがあることは、私もそうだろうなと思います。だからこそ、「誰からも反応がなく、壁に向かって叫ばざるを得ない」という時期をどう乗り切っていくかというのは重要なのですよね。
アウトプットのハードルを下げる。モチベーションに頼らない方法を見つける
仕組み化とか。日課化とか。私が毎朝職場に持っていく弁当を作るのを当たり前にやっている、そのような感じですね。モチベーションに頼らない方法は、見つけてしまえば強いです。最近の若者言葉で言えば優勝です。はい。
一方で、以下のようなアンチパターンもあります。結果を焦れば焦るほど問題になるのではないでしょうか。
- いきなり壮大なことをしようとする
- いきなり未経験要素が二つも三つもある分野に手を出す
- いきなり美辞麗句を並べようとする
「アウトプットを続ける」というのは至上命題です。その限りにおいて、ある程度の逃げ道を作ることは、投げ出さないための心の平安を得るという意味ではむしろよろしいのではないしょうか。その意味で、Duolingo(スマートフォンを主なプラットフォームとする、無料の英語その他語学学習ソフト)の「1日5分とか10分で達成できる目標を設定し、やっていくうちに、連続学習日数記録を途絶えさせたくなくなる」という作りは巧いと思いました。
広がる世界の向こう側
hekitter氏による発表です。「お仕事の外の世界に、きっと新たな気づきがある」「アウトプットをしている人たちは輝いている」というのは、自分の観測範囲でも確かにそう感じます。同人サークルの主宰であったり、コスプレイベントの主催であったり。よくよく考えたら、お仕事の外の世界を見渡すと、私の周囲にもそういう人って多く居るのですよね…
他律から自律へ
「世の中駆動のアウトプットを継続して行うことができる」というのは、多分一種の才能なのではないかと思います。それで飯を食っていけるほどの才能。そんな才能を持たない多くの人たちであれば、どこかで発想の転換が必要になるのです。すなわち、世の中駆動から自分駆動へということです。hekitter氏の発表では、「興味がない・疲れる・違和感がある、そんな状況から、やりたい・力になりたい・チャレンジしたい、そんな状況へのシフトチェンジ」という趣旨のことをおっしゃっていました。
アウトプットで未来を創る
興味を持ったことはとにかくやってみる。ティンと来たなら、そのやり方をより発展させる。違和感があるなら、やり口を変えてみる。しかし、あくまで自分のスピードで。その積み重ねで、観測範囲の世界はきっと変わる。…私もかくありたいものです。
Podcastパーソナリティになる意味
「Podcast生やすお兄さん」ことKANEさんによる発表です。電話やボイスチャットもそうなのですが、音声のみによる情報伝達というのは、何を伝えられて何を伝えられないかに独自性があります。そのあたりの話でした。
Podcastといえば、就職当初の時期には「ヴォイニッチの科学書」とかをよく聴いていました。「山中伸弥先生がiPS細胞を発見した」「ボイジャー1号が末端衝撃波面を通過した」といったトピックがこの時期だったことを覚えています。
Podcastで使える表現手法、使えない表現手法
一般に、聴覚で伝わる表現手法は、Podcastでも使うことができます。抑揚、しゃべる速さ、言い回し、単語の選び方などです。
一方で、視覚でなければ伝わらない表現手法は、Podcastでは使うことができません。ジェスチャー、目線、唇の動き、表情などです。
KANE氏もおっしゃっていましたが、日常会話においては、意思疎通の相当割合を視覚情報に頼っているものです。このことは、意識しないとなかなか気づきづらい。しかも、否が応でもそうしたことを意識しなければならないのが、Podcast配信という世界なのです。
Podcastの複数配信…あるいは、主配信者と補助者の違いについて
「KANE氏が複数のPodcastに関わっている」といっても、その立場は番組によって違います。具体的には主配信者と補助者という違い、ということです。
Podcastにおける主配信者の役割は、一単語で言えば話し手ということである、私はそう認識しました。前述「伝え方を意識し、磨く」というのは、主に主配信者・話し手としてのPodcast配信についてのトピックなのであろうと思います。
一方、Podcastにおける補助配信者の役割は、一単語で言えば聞き手ということである、私はそう認識しました。回線向こうのリスナーというより、話し手と同じ場におけるキュレーターやファシリテーターといった立場で関わる、そういうことであろうと思います。
自分自身が話し手・配信者となって情報を共有する、そういうアウトプットも非常に大事です。一方で、話し手から適切な情報を引き出す、話し手が話しやすいように場を進める、ヒートアップしすぎた場を沈静化させる、そういった聞き手の仕事も非常に大事です。スポーツの審判しかり、カンファレンスの司会者しかり、聞き手側の仕事は正当に評価されづらい。私たちも、そのことにはよくよく気をつけなければなりません。
Podcastの始め方
斯様Podcastというのは、コミュニケーションに必要な能力を広範囲にわたって磨くことができるツールです。しかしながら、アウトプットをしている人たちの間でも、Podcastという手法に馴染みのある人は少数派であるというのが現実です。どういうプラットフォームがあるのか、どういうテクノロジーが必要なのか、どういう物理的道具が必要なのか…わからないことは山積しています。
ということで、次回技術書典において、親方Projectさんより「ワンストップPodcast」頒布開始予定です!興味を持たれた方、技術書典共々手を出してみてはいかがでしょうか。これからの人生で一番時間が残されているのは今ですよ!