today::エンジニアに憧れる非エンジニア

今のところは、エンジニアとは言えないところの職種です。しかしエンジニア的なものの考え方に興味津津。

【まとめ】夢ある未来の描き方Ⅱ - 日本マイクロソフト エバンジェリスト(業務執行役員) 西脇資哲さん発表

人生100年時代、とはいうけれど

「現在の医療技術では、80年ほどで身体のほうの限界が来てしまう」…西脇さんが75歳くらいの方から話を聞いた際に抱いた感想について、このような話をしていました。数十mも歩けないほど脚が悪くなる、という話が特に印象に残っています。

対面でやるべきこともある

現在の日本マイクロソフトでは、兼業・副業に関する申請は、「紙書類で、いくつかの社内部署の承認を得た上で」という形が堅持されているそうです。実際に承認を得るべき部署としては、広報担当部署や役員の名前が上がっていました。その中で必ず聞かれるのは、「会社として情報発信していいか?社内に事例として広く共有していいか?」ということなのだそうです。

紙書類・ハンコというのは、とかく合理性のない古い業務慣習として叩かれがちなものです。しかしながら、このような「所属企業にもメリットがあり、広く共有されるべき内容の話」については、対面で本人が熱く語ることに大きな意義があるのではないかと思います。また、「個人のキャリアに関する話」についても、本人の口から語ることに意義があるのではないかと思います。合理的な理由が明確に示せるのであれば、古い慣習だからといって目の敵にするべきではない…このことは私も気をつけたいです。

失敗だからこそ得られる成果もある

いわゆる「ホリエモンロケット」が打ち上げ直後に爆発した事例から、項名記載のテーマへと話をつなげていました。当該ロケットについては、西脇さん自身も個人として支援活動を行っているそうです。

  • 事故がどのような過程を経て、どのような態様の災害につながるかの知見
  • 実際に発生した災害の内容、規模
  • 事故を災害にしないためのアイディアにつながる基礎データ

上述箇条書きのような知見は、確かに失敗だからこそ得られる知見だと思います。

雑感

現状と未来…時価総額世界トップ10の推移から考えてみる

現在(2019年頃)

皆さん知っての通り、GAFA時価総額世界トップ5圏内に君臨しています。GAFAの存在は、AWS他各種サービスの存在により、「それなしでは日常生活・社会活動が現実的に不可能」というところまで浸透しています。

また、アリババやテンセントといった中国の個人決済・ソーシャルネットワーク界を掌握した企業が時価総額世界トップ10圏内に位置しています。決済インフラを掌握した企業は強いのですが、例えばJR東日本がそのような企業を目指すという話は聞こえてこないですね。

10年前(2009年頃)

未だリーマンショック真っ只中という時期です。当時は中国企業が現在以上に株式市場で存在感を示していました。しかしながらその様相は、アリババやテンセントが頂点に君臨する現在の中国株式市場とは大きく異なります。当時中国株式市場のトップグループを形成していたのは、ペトロチャイナ、チャイナモバイル、シノペック等、アリババやテンセントに比べれば著しくハード寄りの企業でした。米国市場のトレンドを10年遅れでなぞっているような感じでしょうか。

20年前(1999年頃)

インターネット黎明期です。ゼネラル・エレクトリックコカ・コーラ等製造業がまだ株式市場を牽引していました。コカ・コーラ他生活密着型の大手企業は、顔ぶれにやや変化はありつつも、当時から現在に至るまで時価総額トップ50グループで存在感を示し続けています。

30年前(1989年頃)

日本のバブル景気が頂点に達した時代です。日本企業が世界時価総額トップグループを席巻していました。バブル景気と当時の円高トレンドは、それほどまでに破壊力があったということなのですね。

別の意味で存在感を示していた会社

別の意味で存在感を示していたのが、エクソンモービルマイクロソフトでした。これらの会社(エクソンモービルは旧エクソン含む)は、20年ないしは30年にわたって時価総額世界トップ10に君臨し続けています。現在進行で急成長を続ける企業もエクセレントカンパニーである一方で、こうした「長きにわたってトップに君臨し続ける企業」というのも、別の意味でエクセレントカンパニーです。

未来

これだけの諸行無常を見ていると、GAFAですら10年後安泰とは言えません。西脇さんも「会社そのものがなくなっている可能性は低いにせよ、近い将来にGAFA時価総額世界トップ10から陥落する可能性は十分にある」という趣旨の発言をしていました。

今後10年スパンで大きなインパクトがありそうな世界的トレンドとして、例えば「インターネットのスプリンターネット(国家単位で分断されたネットワーク)化」を挙げることができます。そうした流れの中で、「明確にGAFAを狙い撃ちにした」と言われるGDPREU一般データ保護規則)が2018年に発動しています。こうした世界的トレンドを見ていると、「近い将来にGAFA時価総額世界トップ10から陥落する可能性は十分にある」という主張は、確かに同意に値します。

補足

野村資本市場研究所の資料によれば、ニューヨーク株式市場・NASDAQ市場・上海株式市場・香港株式市場においては、株式時価総額が2009年から2019年2月末までの10年間で約2倍からそれ以上まで増大しています。東京株式市場においても、同期間に2倍とまでは行きませんが、株式時価総額が1.5倍以上には増大しています。一方で、欧州の諸株式市場などでは、株式時価総額は大きな増加を示していません。「世界的な金余り・投資マネーの株式市場への積極的な流入」とよく言われる中にも、濃淡はあるのです。欧州の諸株式市場の関係者が抱く危機感は相当なものではないでしょうか。

xR技術…空間を見る技術

「成熟産業」と言われるような自動車製造・鉄道施設保守・航空機保守、あるいは医療現場においても、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)は、一般消費者が考えるより広く使われているそうです。そのような現場事情についての言及が、西脇さんからもなされていました。「私事で恐縮ですが、椎間板ヘルニアの治療にも…」とおっしゃっていたことが印象に残っています。

とりわけ自動車製造・鉄道施設保守・航空機保守等の現場においては、ヘルメットと一体不可分にAR・VRツールが実装されることが多いのだそうです。製造や建設の現場において、頭部外傷を防ぐためのヘルメットは必要不可欠であり、そこにAR・VRツールを実装するというのは、確かに合理的な話です。

人間だからこその強み

世の中には正解がない事柄も多い

とかく日本においては、「今あるプロダクトをより便利に、より安く」が正解であると考えられる風潮が強いです。しかしながら、それが行き過ぎてしまうと、「差別化といえぬ差別化と、際限のない価格競争。それにより産業が疲弊する。産業が疲弊するから労働者の取り分が減る。労働者の取り分が減るから消費が落ち込む。消費が落ち込むから価格競争がますます激化する。以下ループ」という悪循環に至ってしまいます。誰も幸せになりません。おそらくはそれが、「失われた20年」などと言われる日本社会の疲弊に対する一つの答えなのではないかと思います。

後述する「複合創造」や「枯れた技術の水平思考」という考え方は、そうした図式に対するカウンターといえるのではないでしょうか。

相手の年齢や知識に合わせて伝えることができる

西脇さんは、「とかく相手がAIだと、人間がAIに合わせるという形態のコミュニケーションが当然のように行われてしまう」という趣旨のことをおっしゃっていました。日常コミュニケーションしかり、プレゼンテーションしかり、「子供や高齢者からその道の専門家まで、相手が理解できるレベルで意思や情報の伝達を進めていくことができる」というのは、今のところ人間でなければできないことというのは確かにそうです。AIでそれができるようになる時点が、多分未来予測の限界点になるのではないかと思います。

その他、人間だからこその強み

  • カリスマ性
  • リーダーシップ
  • 過去に全く存在しない事例への対処
  • ひらめき、0から1を生み出すこと

これら「人間だからこその強み」に該当する諸要素には、「(ポジティブな意味での、データなどの裏付けのある)経験と勘と度胸」という要素が強いと思います。これまでの人生で形作ってきた人格や思考様式に、過去事例のケーススタディ、最終局面での自己信頼と決断力。必要な能力である一方、私を含めて悩みを抱えやすい能力ではないでしょうか。

以下は、こうした「(ポジティブな意味での)経験と勘と度胸」について言及したNIKKEI STYLEの記事です。

style.nikkei.com

10年後に向けて

西脇さんは、「技術的ブレイクスルーはもはや少なくなった」という趣旨のことをおっしゃっていました。確かに、20世紀の大発明(自動車の産業化、航空機、貨物コンテナ、テレビ、炭素繊維通信衛星…)に相当するレベルの大発明が21世紀に入ってから行われたという話は、寡聞にして接したことがありません。

製品開発から複合創造へ

「複合創造」と聞いて思い出したのは、1980年代に活躍した元任天堂のエンジニアで「任天堂イズムの生みの親」などとも言及される人物・横井軍平氏のプロダクト哲学であった「枯れた技術の水平思考」という言葉です。横井氏の現役時代と比べても、今の時代はサービスありきの風潮は強まっていると思います。そんな中において、「枯れた技術の水平思考」という言葉の輝きは失われることなく、むしろより一層増しているのではないでしょうか。

これから必要になること

  • 日常に疑問を持つこと
  • いろいろな人と知り合うこと

西脇さんは以上2点について言及されていました。

これだけ変化が早い時代ですから、ものの考え方が自分や社内で閉じていては、きっといろいろな意味で世の中から取り残されるのだと思います。新たな仕事のアイディアしかり、外部労働市場における価値しかり。自分のサイロ化を防ぎ、興味のあることに飛びつくチャンスを失わないようにするためにも、「現状を客観的に見られる機会をつくる」というのは重要なのではないでしょうか。そのための方法論と解釈しました。

(個人の話題)そもそも現職ってどうなのだろう

「仕事内容とプライベートがあまりにも乖離しすぎている」と感じています。「自分がプライベートでやっていることが、如何にして仕事に結び付けられるのか」「自分が仕事でやっていることが、如何にしてプライベートやアウトプットに結び付けられるのか」というのがなかなかイメージできません。

また、「世の中の変化の速度に対し、組織としての現職企業のスピード感覚があまりに鈍すぎる」とも考えています。今週社内で聞いた新入社員の育成計画では、「新入社員は現場作業3年。その後施工管理補佐・設計業務等を経て、新卒入社から現場代理人までは最低約10年。」という計画が掲げられていました。ちょっと世の中に対してスピード感覚が鈍すぎて、現場代理人になるころには業界内でしか通用しない社会人になってしまっているのでは…?