通信キャリア側のさらに内側に存在するプレイヤー
上記記事ではブラックボックス化されていますが、キャリア側にはさらに以下のようなプレイヤーが存在します。
- キャリアから直接工事を請け負う通信建設会社
- 通信建設会社から工事を請け負う下請事業者
キャリアから直接工事を請け負う通信建設会社
「キャリアから直接工事を請け負う通信建設会社(元請会社)」は、キャリアと関係性を有する特定少数の企業です。その仕事内容には、以下のようなものがあります。
- 実施設計以降の設計をキャリアから受注し、下請事業者に発注する
- 実際の現地調査や回線開通等の工事を下請事業者に発注する
- 工事に必要なキャリア規格の材料を購入し、管理する
- 工法・工事規格等の情報をキャリアから取得し、下請事業者に共有する
- 工事原価・工事利益を管理する
- キャリアに対して工事の品質を担保する
- キャリアに対し、その他建設業法上の義務を果たす
- 統括安全衛生責任者等、元請会社から出すべき責任者を出す
- 下請事業者も含む現場全体の安全を管理する
- 現場の労災保険等1を取りまとめる
キャリア相手に仕事を行う通信建設業界は、(少なくともNTT東西相手の通信建設の場合)非競争的な業界と言っていい業界構造です。 地域別に棲み分けが図られており、同業他社のシェアを奪うような動きは発生しません。 また、もはや再編余地もありません。 NTT東西から直接工事を請け負うことができる通信建設会社(全国17社)は、2019年3月末までに、全ての会社がコムシスグループ・エクシオグループ2・ミライトグループのいずれかに属することになりました。
情報通信エンジニアリング協会は、NTT東西から直接工事を請け負うことができる通信建設会社による業界団体です。 この団体の正会員17社は、「NTT東西から直接工事を請け負う通信建設会社」とイコールです。
通信建設会社から工事を請け負う下請事業者
実際に現地調査や回線開通工事を行うのは、多くの場合、「元請会社たる通信建設会社から工事を請け負う下請事業者」の工事従事者です。 元請会社、もしくは元請会社の地域子会社と建設工事請負契約を締結した上で工事に従事します。元請会社と元請会社の地域子会社の間にも、建設工事請負契約が存在します。
あえて「工事従事者」としたのは、「当該従事者は、労働基準法適用の労働者とは限らず、会社役員・個人事業主・家族従事者等の非労働者である場合があるため」です。 また、従業員育成を目的として、元請会社の若手社員が現場作業に従事する場合もあります。
通信建設業界の辛さ
コムシスグループ・エクシオグループ・ミライトグループいずれも、売上の50%程度はNTTグループ相手の通信工事に依存しています。 その収益構造は、NTTグループの設備投資動向に強く依存します。 また、経営陣はほぼ全員NTTグループからの転籍者で構成され、中間管理職クラスにもNTTグループからの転籍者が多数入ってきます。 構造的に生殺与奪権をNTTグループに握られている状況です。
通信事業の競争激化や、総務省による通信料金の値下げ要請などにより、NTTグループの事業環境も厳しくなり続けています。 「NTTグループの設備投資」が元請会社の売上の主たる原資であるため、NTTグループの事業環境が厳しくなると、元請会社の事業環境はそれ以上に厳しくなります。 さらに、元請会社から下請事業者への金払いも厳しいものにならざるを得なくなるので、現場作業員の労働環境は厳しくなっていく一方です。
まとめ
- 通信建設会社は、通信キャリアから通信工事を請け負う事業者のことである
- 実際の工事は、通信建設会社により、さらに下請けの事業者に対して発注される
- 通信建設会社(元請け)は特定少数の企業である
- NTT東西から直接通信工事を請けることができる会社は、全国で17社しか存在しない
- NTT東西から直接通信工事を請けることができる会社は、全てコムシス・エクシオ・ミライトいずれかの系列に属する
- 通信建設会社は、主に通信工事全体のマネジメントを職務とする
- ゼネコンの施工管理に類似する職務
- NTT東西から直接通信工事を請ける通信建設会社のビジネスは、NTTグループの事業施策に強く依存する
- 人事的には「NTTグループから通信建設会社への転籍」という慣行が存在する
- 通信建設会社の売上・利益は、NTT依存度が最低でも50%前後である