today::エンジニアに憧れる非エンジニア

今のところは、エンジニアとは言えないところの職種です。しかしエンジニア的なものの考え方に興味津津。

通信設備構築における基本設計と実施設計

以下の記述は、「NTTの加入者線路」を前提とします。

基本設計

通信設備構築における基本設計は、「通信サービスの利用者に提供されるサービスの品質を決める」というのが主な意義となります。 「サービスの品質を決めるための要素」としては、例えば以下のような要素を考えることができます。

  • 面的広がりを持つ地域に対し、どれくらいの利用者が発生することを想定するのか
    • 必要な線路の心線数はどれくらいなのか
  • 通信線路のトポロジーはどのような形態にするのか
    • ループ無逓減
    • スター無逓減
    • スター逓減
  • どれくらいの間隔で、どこでケーブルを接続するのか
  • サービス提供地域において、配線点などのポイントをどのように配置するのか
    • どこで線路を地下から地上に引き上げるのか
    • (光加入者線路の場合)どこに光スプリッタを配置するのか
    • どこから加入者施設への引き落としを行えるようにするのか

また、通信設備構築にあたり、実際に設備が設置されることについて近隣住民等へヒアリングを行うのも基本設計段階になります。 例えば、以下のような事柄は、通信設備構築にあたって考慮されなければなりません。

  • 私有地に設備が設置されることの可否、条件
  • 既存設備の移動要望の有無
  • 道路使用・道路占用の条件

実施設計

通信設備構築に限らず、建設業における実施設計は、「施工者が実際に施工を行う条件を定義する」というのが主な意義となります。 「施工者が実際に施工を行う条件」としては、例えば以下のような要素を考えることができます。

  • 実際に使用する材料や工法の種類
    • 構造計算に基づき、QCDS(品質・原価・工期・安全)要件を満足するように決定する
  • 既存設備への対応
    • その工事により既存設備が設備要件を満たさなくなる場合、既存設備の更改も必要になる
  • 高所作業車の使用の可否、その他どのような工具・器具・機材を用いるか
    • 狭隘道路・急傾斜地等では高所作業車は使用できない
  • その他施工にあたっての注意点
    • 施工にあたっての近隣住民への対応等

NTTと通信建設会社の位置づけ

NTT東西の通信設備構築においては、「基本設計はNTT側で行い、実施設計は通信建設会社側で行う」という分業システムが確立しています。

基本設計を行うのは、NTT東西の設備部門、あるいはNTT東西から業務を受託するNTTグループ各社の要員です。 「通信設備の基本設計にあたり、NTT東西から業務を受託するNTTグループ各社」としては、以下のような企業があります。

一方、実施設計を行うのは、通信建設会社あるいは通信建設会社から業務を受託する協力会社の要員です。 協力会社については、必ずしも通信建設会社と資本的・人的関係があるとは限りません。

このあたりの棲み分けについての説明としては、NTTインフラネットの事業内容の説明が詳しいです。

電気通信主任技術者資格の位置づけ

電気通信主任技術者試験に出てくるような内容は、電気通信インフラの要件定義・基本設計段階の話であり、実施設計・施工段階の話ではないです。 さらに、通信建設の場合、要件定義・基本設計は通信事業者側で行う業界構造になっています。 ゆえに、通信建設会社で施工管理実務に関わるのであれば、電気通信主任技術者資格に付随する知識が役に立つ機会はあまりないのではと思います。

情報通信エンジニアリング協会「アクセスデザインコンテスト」の位置づけ

情報通信エンジニアリング協会主催の設計競技大会である「アクセスデザインコンテスト」の内容は、実施設計を対象としたものとなります。 情報通信エンジニアリング協会そのものが「通信建設会社の業界団体」であるゆえ、上記「NTTと通信建設会社の位置づけ」を考えると、当然といえば当然の帰結ですね。

アクセスデザインコンテストについて余談

アクセスデザインコンテストの内容は、「設計段階におけるNTTの仕事と通信建設会社の仕事の違い」をよく表しています。

個人的には、「通信建設業界への就職意向のある就活生に、アクセスデザインコンテストを見学してもらう」という施策は良い施策ではないかと思っています。 「NTTの仕事と通信建設会社の仕事の違い」について説明することにより、通信建設会社への志望意欲の高い就活生を呼び込むことにつながると考えられるからです。