概要
大規模工事の元請企業に勤めていると、「自分の力で稼ぐ」という意識が希薄になりがちです。その理由として、以下4つの要素について記述していきます。
- 扱う金額のスケールが大きすぎる
- 長期の掛売りをベースとした取引慣習が存在する
- 外部調達の比率が非常に高い
- 発注がなければ仕事もない
扱う金額のスケールが大きすぎる
大規模工事の元請だと、扱う金額が「月数千万円〜数億円」「年間十数億円」というスケールになってきます。 自分で事業を行っている人であればともかく、一般的な被雇用者がイメージできる金額は大きく超えています。
ここまで金額の桁が違うと、「生きたお金が動いている」と考えるのが難しく、「単に数字が羅列されている」という認識になりがちです。かくして、「自分の力で稼ぐ」という認識は薄れていくのです。
長期の掛売りをベースとした取引慣習が存在する
建設業のような長期の請負契約に基づくビジネスの場合、お金の流れも長期の掛売りをベースとしたものとなります。 事業構造上、どうしてもキャッシュアウトが先行し、資金繰りが逼迫するためです。
長期の掛売りをベースとした取引の場合、「キャッシュの出入り」と「会計上の費用・収益の発生」が時間的に大きく離れたものとなります。キャッシュの動きと費用・収益の発生が時間的に離れると、どうしても「お金の流れと費用・収益の関係」がイメージしづらくなってきます。かくして、「自分の力で稼ぐ」という認識は薄れていくのです。
外部調達の比率が非常に高い
建設業、とりわけ元請側の事業者は、事業原価に占める外部調達の比率が非常に高いです。
スーパーゼネコン5社は、いずれも全原価に占める外部調達1の比率が85%前後になります。 そのうち外注費のみで全原価の3分の2です。
結局のところ、「付加価値を生んでいるのは協力会社の工事従事者」ということになるのではないでしょうか。 自分たちが何を付加価値として提供しているのかわかりづらい、ゆえに、「自分の力で稼ぐ」という認識は薄れていくのです。
発注者に強く依存する
建設業には、「発注がなければ仕事もない」という宿命があります。建設業に限らず、受注・請負業態全体の宿命といえます。
特にインフラ工事の場合、発注者そのものが非常に少ないです。 鉄道事業者、一般送配電事業者、通信事業者…「インフラ種別ごとに、発注者は片手で数えられる程度の数」となってきます。
発注者に強く依存する事業構造ゆえ、どうしても甘えが生まれてきます。かくして、「自分の力で稼ぐ」という認識は薄れていくのです。
関連リンク
- ゼネコンにおける協力会社関係の重要性――鹿島建設とその協力会社の事例を中心として――(堀泰) - 名桜論叢 2010年3月 - 「ゼネコンの外部調達比率は85%」の原典