「コアネットワーク・無線アクセスネットワークの完全仮想化」という流れ
NTTドコモをはじめとするMNO各社は、5Gネットワークの構築にあたり、コアネットワークの仮想化を進めています。
その中でも最も先進的でラディカルな事例は、MNOとしての楽天モバイルです。MNOとしての楽天モバイルは、「無線アクセスネットワークも含めた完全仮想化を実現したこと」を謳い、それをセールスポイントともしています。 「無線アクセスネットワークも含めた完全仮想化」まで実現すると、「MNOでなければならない」という機能は、ほぼ「土建設備+α」にまで収斂することになります。
交換・伝送系の仕事は、さらに侵食されていくだろう
「通信事業者のネットワークの仮想化」が進むと、汎用技術で交換・伝送が回るようになります。 汎用技術で交換・伝送が回るようになると、ネットワークインテグレーター1の事業範囲はさらに広がることが期待できます。
一方で、通信建設会社の交換・伝送系事業の事業範囲は、ネットワークインテグレーターに侵食されて狭くなっていくトレンドと考えられます。 極端な話、通信建設会社の交換・伝送系事業は、「レガシーシステムのお守り」が主な仕事になっていくのではないでしょうか。
土建系の仕事はなくならない
土建系の仕事の対象となる設備としては、例えば以下を挙げることができます。
- 電柱
- ケーブル
- 基地局
- 鉄塔
- プラットフォーム
通信建設会社の仕事の中でも、土建系の仕事は、やはり通信建設会社にしかできない仕事と思われます。そう考える理由は以下です。
- 「建設業法」「労働安全衛生法」等の法的制約が厳しい業界である
- 重層下請構造により、工事従事者の所属企業に至るまで強力に系列化されている
かくして、「通信建設業界の土建業界化」が進んでいくことになります。
もっとも、「アクセスネットワークも含めた完全仮想化」に至れば、基地局の設備も大幅に簡略化されます。 基地局の設備が簡略化されると、実際に現場作業に携わる工事従事者の事業運営には影響が出てきそうです。
通信建設会社の仕事の中で、他になくならない仕事としては、「通信電力系の仕事」でしょうか。
無線において進む仮想化の流れは、有線にまで波及するのだろうか
現時点で、「コアネットワークやアクセスネットワークの仮想化」が進んでいるのは、無線通信事業が中心です。 有線通信事業のネットワーク設備の仮想化は、無線通信事業ほどには進んでいません。
ただ、「交換・伝送機能の仮想化」が有線通信事業まで波及するとなると、通信建設業界の土建業界化はより一層進みそうです。
「令和の光の道構想」はあるのか
ここで言う「令和の光の道構想」というのは、「有線アクセス設備事業の法的分離」等のことを指します。
「交換・伝送機能の仮想化」が進むと、「有線アクセス設備事業の法的分離」が可能になるかもしれません。 「有線アクセス設備事業の法的分離」が実現すれば、有線通信事業においても、「発電事業者と一般送配電事業者」のような関係が発生しそうです。
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具体的な事業者名としては、「伊藤忠テクノソリューションズ」や「ネットワンシステムズ」などが挙げられます。↩