概要
2020年度 基礎研修実施模様(PDF) - 情報通信エンジニアリング協会
2020年夏、情報通信エンジニアリング協会が開催する2020年度基礎研修が実施されました。 この記事では、その内容について記述していきます。
基礎研修とは
NTT工事を元請受注する通信建設会社の新卒入社従業員に対して行う集合研修です。 現状では、業界団体である「情報通信エンジニアリング協会(ITEA)」が主として実施しています1。
ITEAとしては、以下のような事柄を研修目的として設定しています。
- 以下の事柄について学ぶ
- 通信設備建設の基礎知識
- 建設現場における安全の基礎
- キャリア形成の初期段階に必要な知識・技能の習得を目的とする
- ITEAが定義するところの「情報通信エンジニア」としてのキャリア形成
基礎研修全体に共通する内容
「通信建設工事に関する技能・技術」と「安全施工の実現に必要な知識」の2つが柱となります。
技能・技術的な内容
基礎研修で扱う「通信建設工事に関する技能・技術」は、以下のような内容となります。
- 通信設備建設における技能・技術・方式
- NTTの工事規格・事例がベースとなる
- 建設工事の基礎
安全に関する内容
基礎研修で扱う「安全施工の実現に必要な知識」は、以下のような内容となります。
基礎研修の分類と、それぞれに特有の内容
基礎研修には、「線路科」「土木科」「所内科」「電力科」「統合科」の5種類があります。
基礎研修線路科
加入者線路の工事に従事する予定の者を対象とした研修です。
技能・技術的な内容については、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
- アクセス設備(電話局~加入者間の線路設備)の概要
- 線路設備の建設に関する知識についての座学
- ケーブル類
- 電柱類
- 宅内設備の建設に関する知識についての座学
- 線路設備の建設に関する技能の実習
- 宅内開通工事に関する技能の実習
- お客様宅への模擬開通工事
- パソコン・インターネット設定
安全に関する内容については、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
- 安全の基本に関する座学
- 危険体感実習
- フルハーネス型墜落制止用器具特別教育
- 労働安全衛生法に定められた特別教育の一つ
基礎研修土木科
マンホール・ハンドホール・管路といった地下構造物の工事に従事する予定の者を対象とした研修です。
技能・技術的な内容については、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
- 通信土木設備の概要
- 土木設備の建設に関する知識についての座学
- 土木全般に関する建設技術の基礎知識
- マンホール・ハンドホール・管路設備個々の建設技術
- 諸図面・設備記録などのポイント
- 土木設備の建設工事に関する技能の実習
安全に関する内容については、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
基礎研修所内科
主にNTT電話局における、伝送・交換設備の工事に従事する予定の者を対象とした研修です。
技能・技術的な内容については、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
- 伝送・交換に関する知識についての座学
- デジタル通信技術
- 伝送・交換に関する建設技術
- 伝送・交換設備の建設工事の概要
- TCP/IP技術
- IP通信方式
- 無線通信に関する知識についての座学
- 電波の性質・種類・変調方式
- 固定無線・移動無線に関する技術
- 伝送・交換設備の建設工事に関する技能の実習
- IP通信の基本についての確認(ルータ設定等)
安全に関する内容については、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
- 伝送・交換設備の建設工事におけるリスクや基本動作
- 二重床工事
- ラック工事
- 脚立使用工事
基礎研修電力科
主にNTT電話局における、通信電力設備の工事に従事する予定の者を対象とした研修です。
技能・技術的な内容については、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
- 通信電力に関する知識についての座学
- 通信設備における電力設備の位置づけ
- 通信用電力技術の概要
- 通信電力工事の概要
- 通信電力工事に関する実習
- 電力ケーブルの配線工事の基礎
- 養生の基礎
- ラックへのつり込み
- 電圧・極性等の測定器を使った各種試験
安全に関する内容については、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
- 高圧・特別高圧電気取扱業務特別教育
- 労働安全衛生法に定められた特別教育の一つ
基礎研修統合科
基礎研修線路科と基礎研修所内科を合わせた内容の研修です。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行による、研修内容・研修センタ運用の変更
ITEA東日本・西日本両研修センタにおける基礎研修は、例年であれば、新卒入社従業員が入社してまもない5月頭に開始されます。 しかしながら、2020年5月頃は「全国を対象に緊急事態宣言が発令され、集合研修はできる状況ではなかった」という状況でした。 結果、2020年新卒入社従業員向けの基礎研修が開始されたのは、例年より約3ヶ月遅れの7月以降となりました。
2020年度の基礎研修が実施された夏頃は、「新型コロナウイルスの感染拡大が小康状態にあった」という状況でした。 しかしながら、「新型コロナウイルス感染症の世界的流行」という局面は続いていたため、基礎研修の内容や研修センタの運用には変更がありました。 具体的な変更の内容としては、ITEAのレポートでは以下のような内容が挙げられています。
- 実習課題等の変更・省略
- グループ作業課題の大幅縮小(線路)
- マンホール・管路建設実習の取り止め(土木)
- 全員参加の安全朝礼の取り止め
- 食堂の利用制限
- 東日本研修センタに所在する寮の利用休止
まとめ
- NTT工事を元請受注する通信建設会社の新入社員研修には、「基礎研修」という業界共通のプログラムが存在する
- 現状では、業界団体である情報通信エンジニアリング協会が開催するものが主である
- 基礎研修は、「通信建設工事に関する技能・技術」と「安全施工の実現に必要な知識」の2つを柱とする
- 基礎研修には、「線路科」「土木科」「所内科」「電力科」「統合科」の5種類が存在する
- 線路科…アクセス設備(電話局~加入者間の線路設備)
- 土木科…通信土木設備(マンホール、ハンドホール、地下管路等)
- 所内科…電話局における伝送・交換設備
- 電力科…電話局における通信電力設備
- 統合科…線路科+所内科
- 新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、基礎研修の内容・運用にも少なからず影響が出た
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「NTT工事を元請受注する通信建設会社が、全国大手3グループに集約された」という事業環境の変化により、今後の基礎研修は、「資本系列ごとに独自に実施する」という方向に動いています。↩