today::エンジニアに憧れる非エンジニア

今のところは、エンジニアとは言えないところの職種です。しかしエンジニア的なものの考え方に興味津津。

ssmonline #9 ~これからの時代の事業組織の話をしよう - 運用組織のアンチパターン

概要

2021年4月28日に行われたssmonline #9の発表内容・感想のまとめです。

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運用組織のアンチパターンとは

波田野裕一氏は、運用組織のアンチパターンとして以下3つを挙げていました。

  • 優秀な人で支援組織を作る
  • マトリクス組織にしてしまう
  • 組織名を企業規模より盛ってしまう

優秀な人を現場から引き剥がすのは一般にアンチパターンである

私としては、「優秀な人で支援組織を作る」というのは、「優秀な人を現場から引き剥がす」という意味であると解釈しました。その上で、優秀な人を現場から引き剥がすのは一般にアンチパターンといえます。

あらゆる事業の前提として、事業リソースを直接運用するのは事業組織(現場)です。その前提を踏まえ、優秀な人を現場から引き剥がすと、以下の二重苦が発生する…というのが波田野氏の発表内容でした。

  • 現場が空洞化する
    • 優秀な人が引き抜かれてしまったため
  • 優秀な人が成果を出せなくなる
    • 事業リソースから引き剥がされてしまうため

マトリクス組織は一般にアンチパターンである

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組織設計の大原則として、「命令統一性の原則1」があります。命令統一性の原則は、「一人の部下は、特定の一人の上司からのみ業務命令を受けるように組織を構築しなければならない」という原則です。

マトリクス組織というのは、「事業上の上司と職能上の上司を分離する」という組織設計です。「命令統一性を破綻させないようにマトリクス組織を構築・運用する」というのは、一般に極めて困難です2

企業規模不相応に重い組織名の使用は一般にアンチパターンである

「企業規模不相応に重い組織名」とは、波田野氏の発表資料によると、例えば以下のような組織名の使い方を指します。

  • 数十人~数百人規模の組織に「統括本部」という組織名を用いる
  • 数人~100人規模の組織に「本部」という組織名を用いる
  • 数十人規模の組織に「部門」という組織名を用いる
  • 数人規模の組織に「部」という組織名を用いる

企業規模不相応に重い組織名の使用は、組織のタコツボ化を助長する方向にはたらきます。波田野氏は、「違う本部だと他社くらいの感覚になる」と言及していました。名前重要。

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組織名称を軽くするだけでも…

波田野氏は、「組織名称を一段軽くするだけでも、組織の風通しがよくなる可能性はある」という言及をしていました。例えば以下のような名称変更です。

  • 統括本部→本部
  • 部→課

なお、1980年代までの日清紡には、「取締役課長」という職位が存在したそうです3。かなりラディカルに組織名称を軽くした事例といえますね。


  1. 「命令一元化の原則」とも言われます。

  2. マトリクス組織は、フレデリック・テイラーの提唱による「職能別職長制度」とも深い関係を有する組織構造といえます。職能別職長制度が定着しなかったのも、「命令統一性の破綻」が大きな理由であろうと思います。

  3. 国立国会図書館サーチ プレジデント = President 26(9) によれば、1988年9月刊行の雑誌に「日清紡から「取締役課長」が消えた理由」というタイトルの記事があったそうです。その時点までに日清紡における取締役課長という職位は消滅していたとわかります。