today::エンジニアに憧れる非エンジニア

今のところは、エンジニアとは言えないところの職種です。しかしエンジニア的なものの考え方に興味津津。

新入社員研修と安全衛生教育の違い

はじめに

私の現所属企業・現所属部署における新入社員研修は、世間一般における実態と大きくずれているのではないかと考えています。どこがずれているのか、世間一般における新入社員研修とはどういったものなのか。私個人としては、「新入社員研修と安全衛生教育の違い」が核心なのではないかと考えるに至りました。

ということで、この記事では「新入社員研修と安全衛生教育の違いとは何か」というテーマについて解説を書いてみます。

現所属企業・現所属部署における新入社員研修

私自身は、この記事執筆時点において、NTT発注の電気通信工事の請負を主な事業とする企業において、NTT発注の電気通信工事の請負を行う部署に所属しています。当該部署における新入社員研修は、「新入社員研修」と言いつつ、実態としては建設業における「送り出し教育」に近いものとなっています。

「送り出し教育」とは

建設業における「送り出し教育」とは、「雇い主が実施する、現場作業に必要な知識・技能についての新規従事者向け教育」を指します。

労働安全衛生関係法令上、建設業におけるいわゆる「新規入場者教育」については、関係請負人または特定元方事業者が行うものとされています。以下、いわゆる「新規入場者教育」の法的根拠となる労働安全衛生規則第642条の3の規定です。

建設業に属する事業を行う特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときは、当該場所の状況(労働者に危険を生ずるおそれのある箇所の状況を含む。以下この条において同じ。)、当該場所において行われる作業相互の関係等に関し関係請負人がその労働者であつて当該場所で新たに作業に従事することとなつたものに対して周知を図ることに資するため、当該関係請負人に対し、当該周知を図るための場所の提供、当該周知を図るために使用する資料の提供等の措置を講じなければならない。ただし、当該特定元方事業者が、自ら当該関係請負人の労働者に当該場所の状況、作業相互の関係等を周知させるときは、この限りでない。

現実には、新規入場者教育は特定元方事業者自身が行う場合が多いです。「当該現場特有の危険性について最も熟知しているのは、一般的には特定元方事業者である」というのがその理由です。

「新規入場者教育は特定元方事業者が行う」となると、「じゃあ関係請負人は、自身の労働者に対し、労働安全衛生法上の安全衛生教育義務を満足するためにどのような施策を行うべきなのか」というという問題が出てきます。建設業界内部においてその答えとされている教育、それが「送り出し教育」なのです。

現所属企業・現所属部署における新入社員研修の実態

私の現所属企業・現所属部署において、新入社員研修の主な内容は以下の通りです。

  • 就業規則・福利厚生・その他待遇についての教育
  • 社内情報システムの取り扱いについての教育
  • 労働安全衛生法上、現場作業に従事する上で必要とされる各種技能講習・特別教育
    • フルハーネス型墜落制止器具
    • 玉掛け(つり上げ荷重1トン以上)
    • 高所作業車運転(作業床高さ10メートル以上)
    • 酸欠・硫化水素危険作業主任者
  • 電気通信工事の技能労働者に必要とされる各種資格の取得についての研修
  • 電気通信工事の技能習得を示すための各種資格等の取得にあたっての研修
    • 光施工技術者育成課程
    • メタル施工技術者育成課程
    • 2級情報配線施工技能士
  • NTT設備の工事を行うために必要な技能の習得についての研修
    • 情報通信エンジニアリング協会「基礎研修線路科・統合科」

もろに現場で技能労働を行うことを前提とした研修内容です。実際、現所属部署における育成方針は、「新入社員研修終了後は、新卒入社3年目終了まで、現場で技能労働者としてNTT発注建設工事に従事し経験を積む」というのが基本的な方向性となっています。

一方で、ビジネスパーソンとして必要性が高いと考えられる以下のような内容の研修は、新入社員研修としては非常に希薄です。

  • マネジメント工学
  • 戦略的思考

結果として、本項冒頭でも書いた「新入社員研修とは言うが、実態としては送り出し教育」という一言に集約できる研修内容と言えるわけです。

他社における新入社員研修の事例

他社における新入社員研修では、一般に以下のようなカリキュラムが組まれています。

  • 業務コミュニケーション
  • ロジカルシンキング
  • 企業財務・経営指標の見方
  • プレゼンテーション
  • 業種・職種に応じた特有のスキル
    • 製造業におけるQCD
    • 店舗販売業における接客行動
    • その他様々

以上のようなカリキュラムの応用として、以下のようなユニークな内容の新入社員研修を行う事例もあります。

fledge.jp

  • 幼稚園研修(自動車ディーラー)
  • 学校での出前授業(複合機等メーカー)
  • 漫才研修(中古カー・バイク用品販売チェーン)
  • 世界一の竹とんぼを作るモノづくり講座(電子部品メーカー)
  • 35kmウォーキング(タクシー)
  • 英国研修(ブリティッシュパブチェーン)

少なくとも対外的に広く知られる新入社員研修においては、「新入社員研修とは言うが、実態としては送り出し教育」というようなケースは皆無かと思います。

改めて、新入社員研修と安全衛生教育の違い

全体としては、「新入社員研修⊃安全衛生教育」ではないかと思います。「安全衛生教育は新入社員研修を構成するが、安全衛生教育が新入社員研修の全てではない」という意味です。一方で、私の現所属企業・現所属部署においては、「新入社員研修=安全衛生教育」という認識が強いのではないかと思います。