新施工管理方式とは
NTT通信建設工事における、NTT東西と元請事業者との間の業務分担を抜本的に見直した新方式のことです。1998年に運用が開始されました。
後述する「総枠管理と責任施工」を基本的な考え方とします。
前提
「発注者たるNTT東西と、元請事業者たる通信建設会社との間に信頼関係が存在する」というのが前提です。そのような前提を成り立たせるための枠組みとしては、以下のようなものがあります。
- 元請事業者は、建設業許可を有し、経営事項審査の点数が一定以上の事業者である
- 元請事業者は、NTT東西がそれぞれ認定する「電気通信設備請負工事競争参加資格」を有する事業者である
- 当該資格を有する事業者は、全国で20社に満たない→全社の一覧
特に「電気通信設備請負工事競争参加資格」というのは、「一般社団法人 情報通信エンジニアリング協会」ともども、「NTT通信建設業界」を成立させる根底となる制度です。 通信建設工事全体にわたる内容の指導については、「発注者たるNTT東西から情報通信エンジニアリング協会を通じて各通信建設会社になされる」という業務フローが確立しています。 こうした仕組みの存在を考えると、新施工管理方式そのものも、「新規参入に対する障壁、あるいはNTTが通信建設会社を守るための枠組み」と邪推することもできてしまいます…
発注者の責務
総枠管理とは
新施工管理方式における、発注者の責務の基本となる考え方です。以下のような原則からなります。
- 出来形のみを管理し、工事途中での介入は排除する
- 工事実施方法は、原則として元請事業者に一任する
- 発注者自身が行うのは以下の業務に限る
- 法令上、発注者が行わなければならないと定められている業務
- 社会通念・道義的責任上、発注者が対応すべきと判断される業務
- 発注者として行わなければならない、契約内容の履行確認
工事マネージャ
それぞれの工事に対する、発注者側の責任者たるポストです。 工事ごとに発注者が選任し、配置することとされています。
工事マネージャの職務としては、以下のものを挙げることができます。
- 発注意図を元請事業者に伝達する
- 設計品質を確認する
- 法令により発注者が直接行わなければならない手続きを行う
- 元請事業者による設計変更に対し、元請事業者・発注者内の関連部門と協議する
- 工事が設計図面に従って施工されているかを監督する
- 事故等が発生した際、発注者としての対応を行う
- 工事目的物等の受取り・検収について、発注者側の責任者として対応する
- 工事完成図書を発注者内の関連部門に引き継ぐ
実際には、工事マネージャの所属会社はNTT東西本体ではなく、以下のような構成になります。
地下設備の工事マネージャの職務については、NTTインフラネットのWebサイト内に詳細な解説があります。
受注者の責務
責任施工とは
新施工管理方式における、受注者の責務の基本となる考え方です。以下のような原則からなります。
- 工事の施工手段は、受注者の責任において自主的な選択により行う
- 発注者は原則として工事途中で介入しない
- 発注者内の関連部門に対する各種通知・調整等を受注者が直接実施できる
- 進捗管理は受注者側が行う
- 発注者は納期のみを管理する
- 実施計画書の内容には、原則として発注者は介入しない
新施工管理方式により発注者から受注者に移譲されたプロセス
以下のようなプロセスは、新施工管理方式の実施により、発注者責任から受注者責任に変更されました。
- 着工打ち合わせの実施
- 発注者内外の調整・折衝
- 発注者に対する工事着工通知
この他、設計変更処理における受注者の自由裁量範囲も拡大されています。
新施工管理方式以前においては、上記のようなプロセスを発注者責任で行うために、発注者側の責任者として「監督員」というポストが設置されていました。監督員ポストは、新施工管理方式の実施により廃止されています。
まとめ
- 新施工管理方式は、NTT通信建設工事において、発注者たるNTT東西と元請事業者との間の業務分担を抜本的に見直した施工管理方式である
- 1998年導入
- 新施工管理方式は、発注者と受注者との間に信頼関係が存在することを前提とした方式である
- 信頼関係を担保する仕組みとしては、「経営事項審査制度」や「NTT東西の競争参加資格」がある
- 新施工管理方式は、「総枠管理と責任施工」という考え方を根底とする
- 新施工管理方式の導入により、発注者責任から受注者責任に変更されたプロセスが存在する