前書き
「NTT通信建設業界の業務」は、実に多くの許認可が関係します。
「多くの許認可が関係する事業」というのは、「それだけ参入障壁が高く、業界構造が安定した事業」であるという一面もあります。 しかしながら、それは「仕事の進め方に影響を及ぼす因子として、従事者個人ではどうしようもない要素が多い」ことの裏返しでもあります。
この項目では、「NTT通信建設業界における、従事者個人ではどうしようもない要素」として、以下のような事柄について記述していきます。
- 建設業関係の法規制
- 通信事業関係の法規制
- NTTの有線通信インフラに特有の法規制
建設業関係の法規制
NTT通信建設事業に限らず、建設業には、これから取り上げるような独自の法規制体系が存在します。
- 建設業法
- 労働法規
- 社会保険
建設業法
NTT通信建設事業は、建設業法上、許可業種の一つとされる「電気通信工事」に該当します。 発注者たるNTT各社との間の契約は、建設業法上の「建設工事請負契約」に該当します。
建設業法上の「建設工事請負契約」においては、建設業法上、以下のような特有の規制が存在します。
- 工事ごとに、法律で定められた要件の技術者を選任しなければならない
- 元請工事・下請工事問わず、主任技術者の選任は必須である1
- 一定規模以上の元請工事の場合、監理技術者の選任が必須となる
- 主任技術者より要件が厳しい
- 発注者と受注者との間で、契約内容についての書面を取り交わさなければならない2
- 当該書面には、発注者・受注者双方の署名もしくは押印3が必須とされる
労働法規
NTT通信建設に限らず、建設業というのは、他業種に比べて危険有害業務が多い業態です。 加えて、建設業は、重層下請構造を前提として成り立つ業態です。 ゆえに、各種労働法規においても、建設業をピンポイントに対象とした法規制が多く存在します。
- 労働安全衛生法上、免許・技能講習・特別教育いずれかを必須とする危険有害作業が存在する
- 労働安全衛生法上、元請事業者が下請事業者の労働安全衛生について部分的に責任を持たなければならない
- 元請事業者選任の「統括安全衛生責任者」を頂点とした、下請事業者を含む労働安全衛生管理体制を構築しなければならない
- 労働者派遣法上、建設現場への労働者派遣は認められていない
社会保険
社会保険の取り扱いについても、建設業は他業種と異なる扱いが存在します。 労災保険における「有期事業の一括」「請負事業の一括」というのがそれです。 建設現場の労災保険は、事業者ごとに構成されるのではなく、「現場単位で元請一括加入」という扱いがなされるのです。
建設業は、労災保険の取り扱いが特殊であるため、多くの他の事業と異なり、雇用保険と労災保険が一体化されていません。 雇用保険・労災保険、それぞれ別々のものとして手続きが必要となります。 その結果、建設業の社会保険に関する手続きは、他業種には存在しない複雑さをはらんだものとなります。
通信事業関係の法規制
NTT通信建設事業に限らず、通信建設という事業は、「通信事業者発注の通信インフラ工事の請負」を生業とします。 通信建設工事の発注者たる通信事業者に対しては、その事業の公益性にかんがみ、以下のような独自の法規制体系が存在します。
- 電気通信事業法
- 電波法
電気通信事業法
有線・無線問わず、「電気通信事業」全般に適用される法規制です。 電気通信事業法のうち、通信建設工事に影響がある法規制としては、以下のようなものが挙げられます。
電波法
無線電気通信は、「電波」という有限な国民共通の財産を用いるため、その事業運営にあたり電波法による規制が適用されます。 通信建設工事においては、「業務の進め方」というよりは、むしろ「業務で用いる技術の内容」に対して制約を課す類の法規制といえます。
NTTの有線通信インフラに特有の法規制
NTTの中でも、「一般加入者向けに、ユニバーサルサービスとしての有線電気通信事業を提供する事業者」であるNTT東西については、NTT法による事業内容の規制が直接適用されます。
「特殊法人としての事業内容の規制」が適用されるということは、「政策の変化による事業構造への影響が大きい」ということでもあります。 「工事発注者たるNTTが、政策の変化により事業構造に影響を受ける」という現実は、NTT通信建設業界に対しても、「政策の変化により、突如として市場環境が大きく変化する」という形で及んできます。
まとめ
- 建設業関係の法規制
- 通信事業関係の法規制
- NTTの有線通信インフラに特有の法規制
以上のような規制を受けるNTT通信建設業界は、従事者個人ではどうしようもない要素が多い業界です。 「自分自身の裁量で、独創性を持って仕事を進めたい」という人には、正直言って制約がきつすぎると思います。 一方で、そうした要素を黙って受け入れることができ、安定雇用を心底望む人にとっては、ある意味天国のような業界なのではないでしょうか。