today::エンジニアに憧れる非エンジニア

今のところは、エンジニアとは言えないところの職種です。しかしエンジニア的なものの考え方に興味津津。

現代建設業と親方請負制

http://hamachan.on.coocan.jp/denkiukeoi.htmlhamachan.on.coocan.jp

上記文献「請負労働の法政策(濱口桂一郎電機連合NAVI 2007年3月号 原稿)」の内容から、自分がまとめたり考えたりしたことを起こしてみた記事です。

親方請負制とは

親方請負制というのは明治期の工場労働において一般的であった労働形態です。より具体的には以下のようなスキームで構成されていました。

  1. 親方職工が工場主から仕事をまとめて請け負う
  2. 親方職工が工場主から受けた仕事を、部下の職工や徒弟に作業させる
  3. 親方職工の部下の職工と徒弟の賃金は親方職工を通じて配分される

親方職工制は、「制度上は請負だが、同時に親方職工もまた工場主に雇われた職工であった」いうのが大きな特徴です。現代の労働法制・職業安定法制においては、「請負契約であるから雇用契約ではない」という二分法が暗黙の前提となっていますが、親方職工制というのは、そのような二分法が全く通用しない世界だったのは明らかです。

現代建設業と親方請負制

現代の建設業における重層下請構造は、実態として明治以来の親方請負制と大きくは変わらないものであると思います。末端の事業者、とりわけ「一人親方と称されるような個人事業主」や「零細規模の事業主」の提供しているものは、実質的には単純労働とほぼ変わらないものです1 そのような前近代的な構造を残す労務提供の実態は、戦後に整備された法制度、とりわけ職業安定法制とは相いれないものです。

以下は、適正な業務請負の定義について定めた、職業安定法施行規則第4条第2項第1号~第4号の規定です。

  1. 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上の全ての責任を負うものであること。
  2. 作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
  3. 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定された全ての義務を負うものであること。
  4. 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。

建設業の現状と法制度は全くかけ離れたものとなっていることが、法制度、特に職業安定法制から見て建設業がアンタッチャブルな存在とされる2に至った原因ではないかと思います。


  1. 全建総連加盟組合のような「建設一人親方・零細事業主を主として構成される労働組合」は、「一人親方と称されるような個人事業主や零細事業主が労働者として処遇されること、労働法が完全に適用されること」を求めています。「事業主サイドに属する者が、自らが労働者として処遇されることを求める」というのは、アジャイル開発のような「本来の意味での業務請負」が成り立っている世界から見れば信じられない話です。
  2. 建設業と労働者派遣法の関係について、「現実に重層的な下請関係の下に業務処理が行われている中で、 建設労働者の雇用の改善等に関する法律により、労働者を雇用する者と指揮命令する者が一致する請負という形態となるよう雇用関係の明確化、雇用管理の近代化等の雇用改善を図るための措置が講じられており、労働者派遣事業という新たな労働力需給調整システムを導入することは、建設労働者の雇用改善を図る上で、かえって悪影響を及ぼすこととなり適当ではない」(高梨昌「詳解労働者派遣(日本労働協会 1985年)」)と、「前近代性を色濃く残す重層下請構造が存在する、まさにそれを理由として、労働者派遣法の適用対象外とされた」と解釈できる趣旨の記述が、1985年時点で存在しています。

NTT東西発注の電気通信工事の元請は、実は1978年時点から新規参入がない

概要

NTT東西発注の電気通信工事の元請は、遅くとも1978年時点以降に新規参入した事業者が存在しません。より具体的には、「1978年時点で電電公社発注の工事を元請受注していた事業者及びその流れをくむ事業者が、2022年になってもNTT東西発注の通信線路工事を寡占している」という状態となっています。

1978年といえば、まだNTTは存在せず、電電公社が存在していた時代です。しかしながら、電電公社民営化・NTT発足以降も、NTT発注の電気通信工事(特に通信線路工事)に元請として新規参入する事業者は現れず、2022年に至っています。2022年現在においても、NTT東西発注の通信線路工事は、1978年時点で電電公社1級認定業者であった事業者の流れをくむ事業者のみによる寡占となっているのです。

この記事では、1978年2月現在の電電公社1級認定業者26社の内訳と、その26社が如何なる沿革をたどって現在NTT東西発注の通信線路工事を寡占する事業者となったかを記述していきます。

1978年2月時点の電電公社1級認定業者26社

1978年2月10日、第84回国会・参議院決算委員会にて、当時電電公社建設局長であった高橋敏朗氏がこの時点における電電公社1級認定業者26社の内訳について答弁を行っています。

kokalog.net

当該答弁において言及された26社は、本社が所在する地域別に以下となります。

  • 関東(11社)
    • 池野通建
    • 協和電設
    • 三和大栄電気興業
    • 新興通信建設
    • 大明電話工業
    • 大和通信建設
    • 東洋電機通信工業
    • 日本通信建設
    • 目黒通信建設
    • 都築通信建設
    • 電気興業
  • 信越(1社)
  • 東海(2社)
    • 中部通信建設
    • 日本電話施設
  • 北陸(1社)
  • 近畿(3社)
    • 近畿通信建設
    • 昭和電気建設
    • 日本電通建設
  • 中国(2社)
  • 四国(1社)
    • 四国通信建設
  • 九州(2社)
  • 東北(2社)
    • 東北通信建設
    • 大和電設工業
  • 北海道(1社)

2022年現在、NTT東西発注の電気通信工事を元請受注可能な会社(+α)

2022年現在、NTT東西発注の電気通信工事を元請受注可能な会社は、全社が上述26社の流れをくむ会社となっています。太字は1978年時点の電電公社1級認定業者の社名です。

  • 日本コムシス
  • サンワコムシスエンジニアリング
    • 1996年4月、三和大栄電気興業から三和エレックに社名変更
    • 2005年4月、三和エレックからサンワコムシスエンジニアリングに社名変更
    • 同社は現在NTT東西発注の工事を行っていない
  • TOSYS
    • 1997年4月、新潟電話工業が信越通信建設と合併、東日本システム建設に社名変更
    • 2012年10月、東日本システム建設からTOSYSに社名変更
  • つうけん
    • 1992年6月、北日本通信建設からつうけんに社名変更
  • NDS
    • 2012年10月、日本電話施設からNDSに社名変更
  • 北陸電話工事
    • 1978年2月以来現社名である
  • SYSKEN
    • 1986年4月、西日本通信建設から西日本システム建設に社名変更
    • 2014年10月、西日本システム建設からSYSKENに社名変更
  • エクシオグループ
    • 1991年、協和電設から協和エクシオに社名変更
    • 1997年10月、昭和電気建設、昭和テクノスに社名変更
    • 2001年4月、協和エクシオ、昭和テクノスを吸収合併
    • 2022年、協和エクシオからエクシオグループに社名変更
  • エクシオテック
    • 2000年4月、新興通信建設大和通信建設と合併、和興エンジニアリングに社名変更
    • 2015年7月、和興エンジニアリングが池野通建と合併、エクシオテックに社名変更
    • 同社は現在NTT東西発注の工事を行っていない
  • 大和電設工業
    • 1978年2月以来現社名である
  • シーキューブ
  • 日本電通
    • 1999年4月、日本電通建設から日本電通に社名変更
  • 西部電気工業
    • 1978年2月以来現社名である
  • ミライト・ワン
    • 1990年、目黒通信建設がジェイコスに社名変更
    • 1992年4月、東洋電機通信工業が東電通に社名変更
    • 1995年、大明電話工業が大明に社名変更
    • 2001年、近畿通信建設がジェイコスと合併、コミューチュアに社名変更
    • 2012年
    • 2022年、ミライトとミライト・テクノロジーズが合併、ミライト・ワン発足
  • TTK
    • 2005年4月、東北通信建設がTTKに社名変更
  • ソルコム
  • 四国通建
    • 1988年7月、四国通信建設が四国通建に社名変更

その他

1978年時点で電電公社1級認定業者であった事業者のうち、2022年時点で「通信建設業」というカテゴリーに該当しない事業者は、都築通信建設と電気興業の2社となります。このうち電気興業は、「証券コード:東証プライム6706」「DKK Co.,Ltd.」と同一の事業者と思われます。一方の都築通信建設は、その後の沿革が大変闇の深いものとなっています。

↓都築通信建設のその後 w.atwiki.jp

同人誌即売会、グッズのセールスと小説のセールスはまるで違う

概要

twitter.com

「サークル売り子として、グッズ系のサークルでも小説系のサークルでも完売御礼に導いた」という囃ちづるさん。囃ちづるさんの「頒布物のセールスに関する解説」は、私も「おおっ」と思うものでした。その「頒布物のセールスに関する解説」が、こちらのツイートから始まる一連のツイートです。本記事では、こちらのツイートから始まる一連のツイート群について、私見を交えつつ解説していきます。

前提

大前提として、人間は視覚優位の生物です。人間にとって、イマジネーションの主たる起点は視覚情報です。人間であれば、視覚情報を得られない対象をイメージするのは本質的に難しい行為です。ゆえに、セールスのアプローチを考えるにあたって最重要のポイントは「売り物の中身を視覚的に認識するのがどれだけ容易であるか、もしくは困難であるか」となります。(この段落は私見となります)

上述の大前提から、同じ「同人誌即売会の頒布物」としてカテゴライズされる品目であっても、グッズ1と小説では全く違った性質があることが容易に導けます。

  • グッズならば、それが何であるかはぱっと見で明確にわかる
  • 小説ならば、それが何であるかは内容を仔細に読んでみなければわからない

以上の前提を踏まえると、「グッズと小説ではセールスのアプローチが全く違ってくる」「適しているであろうセールスのアプローチは、グッズであれば百貨店の販売員型であり、小説であれば実演販売員型である」…というのが元となるツイート群の主な意見となります。

どのような売り物であっても共通のやり方

「グッズと小説ではセールスのアプローチが全く違ってくる」とはいえ、どのような売り物であっても共通のやり方は存在する…と元ツイート群では説明されています。

  • 立って、自然な大きさ・少し高めの声で呼びかける
  • 目が合ったら笑顔で
  • 一般参加者を受け入れる姿勢を示す
    • 「無償配布品だけでも」「ペーパーだけでも」など

私としては、「サークルスペースの前を通る人は、ひとまず『自サークルの頒布物を購入してくれる可能性のある人』であると考える」「まずは受け入れ、好印象を与える」というスタンスを行動で示すのが良い結果に結びつく…ということなのだろうと思います。

グッズ型の売り物の場合

項「前提」の記述を踏まえて、グッズ型の売り物の特徴としては、以下のような事柄が導けます。

  • それが何であるかについて、詳細な説明が要らない
  • 買うか買わないかは初見数秒で決まるのが一般的である
  • ゆえに、売り物自体について、売り手側が積極的に働きかける必要がない

その結果、グッズ型の売り物の場合、セールスのアプローチのポイントは以下のようなものになる…と元ツイート群では説明されています。

  • 頒布品についての話は手短に済ませる
  • 相手の服装・戦利品等を褒める
  • 相手の話を聞く場面を設ける

小説型の売り物の場合

項「前提」の記述を踏まえて、小説型の売り物の特徴としては、以下のような事柄が導けます。

  • それこそ手に取って本を開くまで内容がわからない
  • それが何であるかを知るためのハードルが高い
  • ゆえに、売り物自体について、売り手側が積極的に働きかける必要がある

その結果、小説型の売り物の場合、セールスのアプローチのポイントは以下のようなものになる…と元ツイート群では説明されています。

  • 売り物の魅力を手短に話す
  • 相手に売り物を渡し、内容を見てもらう
    • その時に、相手の注目を惹きそうなキャッチフレーズとともに
  • 細かい内容は話さずに、抽象的に売り物を褒める

その他の特徴を持つ売り物

(この項は、全体が私見となります)

グッズ型であっても、より説明が必要となるケースはあるでしょう。例えば以下のようなケースです。

  • キャラクターと何らかの他概念を組み合わせたもの
  • キャラクターイメージを抽象化し、再構築の上でグッズとして構成したもの

オリジナル楽曲をはじめとする音系の売り物は、小説系の売り物に近い特徴を持つ売り物です。音系の物品は、視覚ではなく聴覚ありきの物品であるからです。

また、無形物2を売るにあたっては、「小説系の売り物の売り方」を小説そのもの以上に突き詰めていく必要があると思います。

結語

  • 人間は視覚優位の生き物であるゆえ、グッズと小説ではセールスのアプローチが全く違ってくる
  • どのような売り物であれ、まずは購入者となりうる人を受け入れ、好印象を与えるところから
  • 「グッズ」「小説」以外のカテゴリーの場合、セールスのアプローチは「対象物はどれだけ視覚的に認識しやすいか」を念頭において考えよう

こんなところでしょうか。


  1. 本記事において、「小説」と対置して使う「グッズ」は、「キャラクターの画像が印刷・彫込等されているもの」を指すものとします。

  2. 「情報」「コミュニティ」「プラットフォーム」などが該当します。

私製「情報配線施工技能者」のCCUS能力評価基準

概要

情報配線施工技能者には、現時点で建設キャリアアップシステム(CCUS)能力評価基準を作成できるだけの資格体系が存在します。しかしながら、これらの資格体系は、現時点でCCUS上の位置づけが存在するものではありません。というわけで、私的に「情報配線施工技能者のCCUS能力評価基準が作られるとしたら、その内容はどういったものであろうか」を考えてみました。

この記事の内容は私製の叩き台であり、建設キャリアアップシステム上の位置づけが存在する正式なものではありません。

本記事の作成にあたり、以下の文書を参考にさせていただきました。

呼称

情報配線施工技能者(?)

CCUSの技能者登録上の職種コード

  • 大分類 09 電工 > 小分類 02 電気通信工
  • 大分類 09 電工 > 小分類 05 電話・インターネット工

能力評価実施団体

(特非)高度情報通信推進協議会(?)

認定日

未定

内訳

レベル4

レベル4就業日数

10年(2150日)

レベル4保有資格
レベル4就業日数(職長+班長

職長として3年(645日)

レベル3

レベル3就業日数

5年(1075日)

レベル3保有資格
レベル3就業日数(職長+班長

職長または班長として1年(215日)

レベル2

レベル2就業日数

3年(645日)

レベル2保有資格

レベル1

建設キャリアアップシステムに技能者登録され、かつ、レベル2からレベル4までの判定を受けていない技能者

注釈

「●」で示した資格は、いずれかの保有で可です。

「自分の仕事に値段をつけられない構造」が生むもの

「自分の仕事に値段をつけられない構造」とは

ある事業が「事業」としてまともに成立しているならば、その事業は「自分の仕事に値段をつけられる構造」が存在していると考えてよいでしょう。具体的には、以下のようなメカニズムに基づいて仕事に値段がつけられます。

  • その仕事に対する購入者のブランドイメージ
  • 同様の仕事の市場価格・相場
  • 他事業者との競争状況

しかしながら、世の中には上述のような状況が成り立っていない事業が少なからず存在します。そのような構造を「自分の仕事に値段をつけられない構造1」として、「自分の仕事に値段をつけられない構造」の問題点について記述していく…というのが本記事のテーマです。

「値段がブランド価値を生む」という現実への無頓着

www.gentosha-mc.com

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「値段付けはブランド価値の根底となるもの」であり、「安売りは長期的にブランド価値に致命的な悪影響を及ぼす」というのは、販売行為に従事する人であれば、上記記事に限らずイメージできるものでしょう。

一方で、「自分の仕事に値段をつけられない構造」の場合、市場に参加する事業者も「値段を安くしなければ受注できない」という価値観を強く有しているのが一般的です。その結果、「同じ値段で多くの付加価値をつける」「付加価値が同じなら値段を安くする」という発想を皆が行い、「悪気なく自分を安売りする」「悪気なく知識労働を安売りする」というパターンに至るわけです。市場全体が「自分を安売りして、結果自分の価値を下げてしまう」というアンチパターンに陥るわけですね。

「自分がしている仕事の相場感」がわからない状況

特に建設業においては、「発注者が決めた値段が先に存在し、そこから受注各段階でマージンを引いていったものが各事業者の取り分となる2」「発注者による値段付けは、コストの積み上げによって行われる」という現実が存在します。そのような状況では、価格決定メカニズムに対して無頓着となることは避けられません。

「自分がしている仕事の相場観がわからない」という状況のもとでは、「異常な安値で仕事を受注しても、それが当たり前だと思ってしまい、異常な安値で仕事を受注していることに気づかない」という問題が発生します。「異常な安値」が上述の「価格がブランド価値を生む」という現実と合わさると、「業界全体が自分を安売りする」という構図となり、外からも「あの業界は自分を安売りする業界だ」「あの業界が相手なら足元見ても問題ないぞ」というイメージを持たれ、業界全体が等しく苦しむようになるのです。

「事業主」という概念に対する誤解

「自分の仕事の値段を自分でつけることができる」というのは、事業主という概念を成立させるための必要条件です。対偶を取ると、「自分の仕事の値段を自分でつけられない者は事業主ではない」となります。

しかしながら、「自分の仕事に値段をつけられない構造」のもとにおいては、「自分の仕事の値段を自分でつけていない者が『事業主』と称する」というケースが多々発生します。「実際には労使メカニズム3で仕事の値段が決まっているにもかかわらず、受注側が自分を『事業主』と考えてしまう」というようなパターンですね。

「値段以外に競争力を見いだせる要素がない」という現実

特に建設業においては、工法等は既にコモディティ化しているのが一般的です。また、公共性が強い工事においては、「諸事情により、適用する工法そのものも事前に決まっている4」というケースが少なくありません。そのような状況では、「価格以外に競争力を見いだせる要素がない」という厳しい現実が存在します。

「値段以外に競争力を見いだせる要素がない」となると、「際限なき価格競争により、業界全体が等しく疲弊していく」という構図になるのは避けられません。


  1. このような構造が存在する例として、「公共工事」を挙げることができます。公共工事には、「予定価格の上限拘束性」というルール(発注者が決めた予定価格を上回る価格での応札は無条件に一律失格とするルール)が一般に存在し、「仕事の値段」の少なくとも上限部分については発注者が決めることがルール上も当然とされています。

  2. 国発注の工事の競争入札には、会計法第29条の6により、「予定価格を超える価格で落札することはできない」という規制が存在します。予定価格を1円でも超えたら失格です。そのため、入札参加者は「いかに予定価格ギリギリの値段で落札するか」を求める志向が強くなります。

  3. 本記事では、「発注者と受注者の力関係によって外注契約の値段が決まる」「発注者に比べて受注者の力が弱い場合、一方的な価格引き下げが行われる場合があり、しかも受注者は対抗手段を持たない」というメカニズムを「労使メカニズム」としています。当該「労使メカニズム」は、「他事業者との競合状況や市場の需給状況によって外注契約の値段が決まる」という「市場メカニズム」の対義語となります。

  4. 公共工事においては、「会計監査を無難に乗り切るために、建前上任意仮設とされているものが事実上指定仮設となっているケース」が多いとされます。ある種のインフラ工事においては、「工事に使われる技術そのものが発注者により開発されたものであり、工法そのものも発注者から与えられるのが当たり前となっている」というケースが存在します。

ジャパニーズトラディショナルな信義則

ジャパニーズトラディショナルな…

alfredplpl.hatenablog.com

ある程度以上の伝統を持つ日本の大企業に対し、「ジャパニーズトラディショナルカンパニー(JTC)」と呼ぶ場合があります。「日本の大企業のダメな部分を揶揄する」という意味合いを多分に含む表現であり、良い意味ではまず使われない表現です。

しかしながら、「信義則の日本独自解釈」というのは、そうした契約に関係する人でない限り、なかなか問題にはされません。当記事では、「日本独自の解釈がなされた信義則」を「ジャパニーズトラディショナルカンパニー」に倣って「ジャパニーズトラディショナルな信義則」と定義し、その定義や内実について言及していきます。

「ジャパニーズトラディショナルな信義則」とは

信義則に対する以下のような解釈のことを指します。日本のビジネスの現場においては、当たり前のものとして受け止められているのではないでしょうか。

  • 発注者・受注者双方に対し、モラルハザード1の発生を禁止する
    • 発注者は、受注者に過度の負担をさせないことを前提とする
    • 受注者は常に発注者の利益を第一に考え、発注者の利益を害して超過的な利益を得るような行動に出ないことを前提とする
  • 発注者は契約変更の影響を正確に評価できることを前提とする
  • 受注者は契約変更の必要性・規模について、立証責任及び立証義務を有さない
  • 受注者は契約不適合(旧…瑕疵担保)について無過失責任2を負う
  • 契約が想定しない事柄についての決定手段が、著しく具体性を欠く3ものである

かつての日本企業の代表的勝ちパターン

「ジャパニーズトラディショナルな信義則」は、多くのビジネスが日本国内で完結できていた時代において、日本企業の代表的な勝ちパターンの一つでした。「契約を極限までシンプルなものにすることにより、契約に割くリソースを最小限とし、生産活動にリソースを全振りすることができた」というのがその理由です。

なお、「ジャパニーズトラディショナルな信義則」が企業の勝ちパターンとして成立するためには、「契約当事者が同じ価値観を共有していること」が前提として必要とされます。実際、多くのビジネスが日本国内で完結できていた時代には、「契約当事者が同じ価値観を共有している」という前提も成立していました。

現代の日本企業の代表的な足かせ

一方、経営がグローバル化してくると、「ジャパニーズトラディショナルな信義則」は、逆に経営の大きな足かせとなります。

日本国外の事業者に、日本企業と同じ価値観を有することは期待できないですし、期待してもいけません。価値観を共有しない関係性の下では、「契約によって権利義務関係をデザインする」「契約によって紛争解決手段を定める」「契約によって補償を定める」といった営為が非常に重要になってきます。しかしながら、「ジャパニーズトラディショナルな信義則」を所与のものとして事業を展開してきた日本企業は、日本国外の事業者との間の契約をうまくデザインする能力が不足してくるのです。

実際、ゼネコンなどにおいては、「突発的な請求や費用の高騰により、海外案件で大赤字」という事態が多く発生しています。

www.nikkei.com

toyokeizai.net

プラントエンジニアリング大手が生きる道

私自身としては、日揮千代田化工建設といったプラントエンジニアリング大手は、「ジャパニーズトラディショナルでない信義則」に勝機を見いだせるのではないかと思います。「途上国を含めた海外建設案件を数多く手掛け、長年に渡り事業を続けている」というのは、「ジャパニーズトラディショナルでない信義則」について、相応のノウハウがなければ不可能であるからです。

参考文献


  1. 当記事では、「プリンシパル-エージェント関係におけるモラルハザード」を指します。「エージェントがプリンシパルに対して情報優位にある場合に、エージェントが自らの利益を図り、プリンシパルの利益を害するような行動に出る」という行動様式のことです。

  2. 「ジャパニーズトラディショナルな信義則」に基づかない契約であれば、一般に当該責任は過失責任とされます。

  3. 多くの場合、「甲乙協議の上定める」の一文のみです。

会社の飲み会の問題地図

事実上拒否権のない
強制参加
事実上拒否権のない 強制参加
意に反して
奪われるお金
意に反して 奪われるお金
酒が飲めない人の
負担感の強さ
酒が飲めない人の 負担感の強さ
持ち込まれる
仕事上の序列関係
持ち込まれる 仕事上の序列関係
アルコールによる
翌日への悪影響
アルコールによる 翌日への悪影響
疑問なく選択される
飲み放題プラン
疑問なく選択される 飲み放題プラン
自己顕示欲を
満たそうとする
上司層の存在
自己顕示欲を満たそうとする上司層の存在...
非喫煙者の前での
喫煙
非喫煙者の前での 喫煙
参加させられ感
参加させられ感
意に反して
奪われる時間
意に反して 奪われる時間
家族との関係悪化
家族との関係悪化
家庭で過ごす
時間の減少
家庭で過ごす 時間の減少
身体的健康/
精神衛生への
悪影響
身体的健康/精神衛生への悪影響...
仕事の
パフォーマンス悪化
仕事の パフォーマンス悪化
ハラスメントの
発生
ハラスメントの 発生
生活満足感の悪化
生活満足感の悪化
無理な飲酒
無理な飲酒
参加者間での
分断の助長
参加者間での 分断の助長
プライベート活動を行う
時間の減少
プライベート活動を行う 時間の減少
社会との接点減少
社会との接点減少
軽んじられる
酒の質
軽んじられる 酒の質
元を取ろうとする
意識
元を取ろうとする 意識
集団で酔っ払うことを
目的とする
飲酒文化
集団で酔っ払うことを目的とする飲酒文化...
日本文化における
ハレとケ
日本文化における ハレとケ
過度の飲酒を
咎めない/
助長する風潮
過度の飲酒を咎めない/助長する風潮...
無礼講意識
無礼講意識
他人の
プライベートへの
無配慮
他人のプライベートへの無配慮...
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「事実上拒否権のない強制参加、プランは飲み放題、役職者・喫煙者・酒飲みがイニシアティブを握る」といった特徴に象徴される「旧来型の会社の飲み会の問題地図」です。「旧来型の会社の飲み会」は、以下のような問題につながっていきます。

  • 社会との接点減少
  • 家族との関係悪化
  • 生活満足感の悪化
  • 仕事のパフォーマンス悪化
  • ハラスメントの発生

「酒は酔っ払うために飲むものという認識」「仕事上の序列関係が持ち込まれる飲み会」「何も考えず、何も説明なしに飲み放題が選択される」といった風習は、そろそろアップデートする必要があるでしょう。