概要
2020年10月29日にライブ配信が行われた、つくばフォーラム冒頭におけるNTT持株会社 澤田社長の基調講演について書いた記事です。
ライブ配信が行われた時間帯は、10時15分~11時00分でした。
全体のタイトルは、「アフターコロナ社会におけるNTTグループの取り組み」というものです。
新型コロナウイルス感染症に起因する世の中のトレンド
NTTグループにおける新型コロナウイルス感染状況
NTTグループは全世界で事業を展開しているだけに、新型コロナウイルス感染症の影響も全世界レベルとなってきます。
- 延べ感染者、世界で2400人
- 日本国内400人
- 日本国外2000人
なお、当該数字を算出した時期については確認できませんでした。 私が聞き取れなかっただけかもしれません。
世界地域ごとの景況感の違い
まず冒頭に、PMI(Purchasing Manager's Index)について解説がなされているWebページを記載しておきます。PMIは、50を境に上が「景況感が良い」、下が「景況感が悪い」とされます。
NTT澤田社長は、「PMIの値の推移」により、世界地域ごとの景況感の違いについて説明していました。
私としては、「米国や欧州と比べ、日本におけるPMIの数字の推移が遅行的であったこと」が印象に残っています。 その結果、「米国や欧州で8月にPMI50超えとなった一方、日本は9月に至るもPMI50割れ」となっている…という現状が示されていました。
ニューローカリズムとグローバリズム
NTT澤田社長の講演では、「国家主義や保護主義といったムーブメントの影響力の強まり」についても言及されていました。 人やモノの移動が物理的に制約される今の時代なら、なおさらその影響力は強まっているのではないかと思います。
一方で、「世界の一体化」という流れは止まらないだろうとも考えています。 我々の生活というレベルでも、今更「国際分業体制」を捨てることはできませんし、ね。
なお、NTTの事業レベルにおいては、「旧西側諸国におけるファーウェイ排除の動きが進むことによる、後述"O-RAN+vRANモデル"の新たな商機」といった影響が出ているようです。 詳しくは、後述「NTTとNECの資本・業務提携について」の項目で説明します。
ICTの環境変化
NTT澤田社長は、ICTの環境変化について、講演内で以下のような見立てを示していました。
利用者から見れば、通信ネットワークの「状態」のブラックボックス化が進むとみられます。 具体的には、以下のような要素がブラックボックス化するのではないでしょうか。
- 回線種別(有線であるか無線であるか、等)
- 使用場所
- 課金形態、料金体系
NTTグループの事業運営について
NTTとNECの資本・業務提携について
はじめに、関連ニュース記事へのリンクを掲載しておきます。
この提携は、「通信事業者ネットワークの仮想化」という大きな流れに属するものと思われます。
- 専門用語でいえば「O-RAN+vRANモデル」
- 旧西側諸国におけるファーウェイ排除の流れの中で、寡占化した既存基地局ベンダーに代わる選択肢が強く求められるようになった
- 楽天モバイルの「完全仮想化ネットワーク」が世界の注目を集めているところ
このような流れの中で、「移動体通信事業向け通信機器市場における日本の復権」を目指すというところでしょうか。
NTT持株会社によるNTTドコモ株の公開買い付け
出来事そのものについては、一般のニュース記事でも度々言及されているところですので、もはや説明するまでもないでしょう。
今回、NTT澤田社長により、以下のようなより踏み込んだ言及がなされていました。
- 総額4.3兆円は「経済政策レベル」であるとか
- 合併効果が想定通り発揮されれば、グループROEが9%から13%に向上すると見込んでいる
IOWN構想について
「現時点におけるIOWN構想の力点」という感じで、NTT澤田社長により、以下のポイントについて言及がなされていました。
- 移動固定融合コアネットワーク
- NTT研究所とドコモ研究所の連携強化
- O-RAN+vRAN
- Disaggregated Computing/OS
- ネットワークそのものがコンピューターになる世界
- デバイス
- メディカルICT戦略
イベントそのもののオンライン化による、IOWN構想の方針変更
NTTは、米国MLBとの連携により、かねてよりUltra Reality Viewing技術の事業化に向けた実証実験を進めてきていました。
しかしながら、昨今の社会情勢により、リアルイベントの開催は困難になっています。 とりわけ「大量の観衆を1箇所に集めるタイプのリアルイベント」の開催は不可能に近いというのが現状です。 そのため、Ultra Reality Viewingの事業展開にも影響が出ているそうです。
一方で、「会場以外を含む共通体験の重要性」は増している…というのが昨今の社会情勢です。 NTT澤田社長は、このような変化に関し、「多地点における無遅延伝送が重要になる」との見立てについて言及していました。
結語 - Access To IOWN
NTT澤田社長の基調講演、最後は「Access To IOWN」という標語で締めくくっていました。 結びの部分では、以下のような事柄についての言及がなされていました。
- 今後も当分の間は、既存技術と新技術の併存が続くだろう
- 新技術の開発にあたり、既存技術をいかに超克していくか