前提
NTTの有線設備系の工事においては、大半の材料は以下のような扱いとなります。
- NTTによる無償支給材料
- NTTが規格化・仕様化し、特定少数の企業によって製造される材料
また、NTTの有線設備工事に使われる材料は、一般に特殊性が高い材料であり、転用や売却が困難です。こうした特徴が顕著な材料の例としては、光クロージャや光スプリッタ等が挙げられます。銅線としての価値があるメタルケーブル等は、むしろ例外的な事例でしょう。
NTT通信建設工事材料に関するプレイヤー
共購会社
NTT規格物品・NTT仕様化物品を取り扱う商社です。共購会社は地域別に存在し、特にNTT東日本エリアの共購会社は1社への集約が完了しています。
- 資材リンコム株式会社
- 北陸通信資材株式会社
- 株式会社東海通信資材サービス
- 西日本資材デックス株式会社
- 中国通信資材株式会社
- 四国通信産業株式会社(Webサイトなし)
- 九州通信産業株式会社
共購会社は、資本的ないしは人的にNTT通信建設会社との強い結びつきが存在します。また、各社ともにNTT通信建設会社の業界団体である情報通信エンジニアリング協会に特別会員として名を連ねています1。
- 資材リンコム
- 東日本のNTT通信建設会社7社を主要株主とする
- 2020年1月末時点の代表取締役社長は、前職がNDSの常務取締役であった
- 北陸通信資材
- 東海通信資材サービス
- 西日本資材デックス
- 資本関係については公開情報が見当たらなかった
- 2020年1月末時点の代表取締役社長は、前職がミライト・テクノロジーズの取締役専務執行役員であった
- 中国通信資材
- 四国通信産業
- 公開情報が見当たらなかった
- 九州通信産業株式会社
通信電線線材協会(線材協会)
NTT通信建設工事に用いる材料・機械等を製造するサプライヤーにより構成される業界団体です。線材協会の会員会社は、例えば以下のような物品を取り扱っています。
- メタルケーブル、光ケーブル
- 電柱
- 加工金属
- コンクリート、ゴム、その他材料
- 高所作業車
後述する全通協は、自身も線材協会の会員となっています。
全国通信用機器材工業協同組合(全通協)
NTT通信建設工事に用いる材料・専用器工具類を製造する中小サプライヤーにより構成される業界団体です。例えばリンク先記載の材料・器工具を取り扱っているそうです。なお、ケーブル等は全通協会員会社の取扱製品に含まれません。
「中小サプライヤー」とはいうものの、業界再編等の結果として、通信建設会社や電線メーカーの子会社も全通協会員に名を連ねています。
NTT通信建設工事材料に関する用語
支給品
NTT東西が通信建設会社に対して無償で支給する物品です。NW装置等の高額物品・精密物品が中心です。
一般に、支給品の在庫コスト等はNTT東西が負います。通信建設会社が保管する場合、「NTT東西からの貸与物品」という扱いになります。そのため、紛失等が発生した場合、債務不履行としてNTT東西から責任を問われることになることが避けられません。
業提品(NTT仕様化物品)
NTT発注工事に用いられる材料・物品のうち、NTTが仕様を定めてサプライヤーに製造させ、通信建設会社が有償で購入する物品のことを指します。サプライヤー側では「NTT仕様化物品」と呼ばれる場合が多い一方、通信建設会社・共購会社では「業提品」と呼ばれる場合が多いです。「業提品」は「業者提供物品」の略であるようです2。
業提品の製造から使用までのプロセスは、概ね以下のようになります。
- 線材協会や全通協の会員たるサプライヤーによって製造され、共購会社に納入される
- 通信建設会社は、共購会社からこれらの材料を購入する
- もっぱらNTT通信建設工事に用いられる
2016年頃のNTT通信建設業界では、「業提物品の代理購入拡大」がトレンドとなりました。「従来NTT東西が負担していた在庫コストを共購会社や通信建設会社に転嫁する」ことを主目的とした施策と想定されます。このときには、元々NTT東西の支給品であった材料の一部が業提品化されました。そうした物品の中には、例えば以下のような物品が含まれます。
- 光ケーブル類・メタルケーブル類
- 光スプリッタ
- 光クロージャ(端子函)類
- マンホール施錠装置
情報通信エンジニアリング協会の機関誌「RAISERS」の2017年1月号には、業提物品の代理購入拡大に伴う共購会社の業務改革に言及した記述があります。
現調品
NTT発注工事に用いられる材料・物品のうち、各通信建設会社が市場から直接調達する物品を指します。NTT通信建設工事以外にも用いられうる物品ですし、サプライヤーが線材協会・全通協会員とは限りません。通信建設会社が共購会社以外からこれらの材料を購入する場合もあります。
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むしろ「各地域に存在するNTT通信建設会社の構成に合わせて、各地域のNTT通信建設会社が出資する共購会社が存在する」という構図が正確なのかもしれません。実際、東日本エリアにおいては、地域のNTT通信建設会社が全国大手3グループに集約されたタイミングで共購会社が1社に再編されています。↩
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「業者提供物品」という語の使用例としては、NTT施設 1986年12月号記事「建設工事の効率化を目指して――「業者提供物品」の拡大」や三代川製作所の会社沿革等があります。↩