概要
建設業は、その事業活動に関係する官庁が多い業種です。 事業活動に関係する官庁が多いゆえの問題も発生します。
この記事では、以下の事柄について記述していきます。
- 建設業に関係する官庁
- 事業に関係する官庁が多いことによる問題点
建設業に関係する官庁
一般的な建設業の場合、特に強い影響力を有する官庁としては、以下の2つがあります。
また、工事種別・工事内容によっては、国土交通省・厚生労働省以外の官庁が関係する場合もあります。
国土交通省
建設業は、「建設業法」という業法が存在する許認可事業です。
一般に、業法が存在する許認可事業においては、業法を管轄する官庁が事業形態に大きな影響力を持つことになります。 建設業法を管轄する官庁は国土交通省です。 ゆえに、建設業における業務の進め方は、建設業法ひいてはその監督官庁である国土交通省に強く影響されることが避けられません。
厚生労働省
労働安全衛生法をはじめとする労働法制
建設業は、労働安全衛生法・労災保険制度上特別な扱い1がなされています。 以下のような事柄が主な理由です。
- 業務全体に占める危険有害業務の割合が、全産業の中でも格段に高い
- 労働安全衛生法に定める免許・技能講習・特別教育が業務従事に必要とされる場合が多い
- 労災事故の発生件数が、全産業の中でも高い割合を占める
- 重層下請構造が一般的ゆえ、労災事故発生時の責任の所在が曖昧になりやすい
労働安全衛生法・労災保険制度をはじめとして、各種労働法制を管轄する官庁は厚生労働省です。 そのため、建設業における業務の進め方は、厚生労働省にも強く影響されます。
職業能力開発促進法
建設業は、職業訓練の枠組みが早期に整備された産業でもあります。 職業能力開発促進法に定める技能検定のうち、建設関係の職種に関わるものは2020年12月時点で34種類が存在します。
その他の官庁
特に許認可事業に関係する設備の工事においては、関係する官庁の数はさらに増えます。 主に「発注者の事業に対する監督官庁」のことですね。
また、道路を使用する作業の場合は、道路交通に関係する以下のような官庁も関係してきます。
建設業の事業活動では多くの廃棄物を出すことが避けられません。 廃棄物処理法を管轄する環境省も、建設業の事業行為に関係する官庁といえるでしょう。
事業活動に関係する官庁が多いことによる問題点
事業活動に関係する官庁が多いことに起因して、以下のような問題点が発生してきます。
- 一見して意味が分からない縄張りが発生する
- 異なる官庁の管轄範囲の境界領域が無法地帯化する
他にも「事務作業が増える」等の問題もあります。
一見して意味がわからない縄張りが発生する
ここで言う「一見して意味がわからない縄張り」というのは、以下のような状況を指します。
- 似たような語句(場合によっては全く同じ語句)を使っているにも関わらず、法律上異なる概念が複数存在する
- 一見して違いがわからない、似たような分野・内容を指す概念が複数存在する
「一見して意味がわからない縄張り」の例は以下です。
- 建設業法上の主任技術者・監理技術者(国土交通省)と、労働安全衛生法上の統括安全衛生責任者(厚生労働省)
- 建設業法上の電気工事業(国土交通省)と、電気工事業法上の電気工事業(経済産業省)
- 建設業法上の主任技術者(国土交通省)と、名称が類似する他の職位
- 労働安全衛生法上の低圧電気取扱業務特別教育(厚生労働省)と、電気工事士法上の電気工事士(経済産業省)
建設業に対する「業務内容が複雑でわかりにくい」というイメージの存在は、こうした「一見して意味がわからない縄張りの存在」が一因となっているのではないでしょうか。
異なる官庁の管轄範囲の境界領域が無法地帯化しやすい
建設業のように多くの官庁が関係する事業の場合、各官庁の管轄範囲の境界も相応に多く存在します。 各官庁の管轄範囲の境界領域は、いずれの官庁も踏み込みたがらず、往々にして無法地帯化するものです。
建設業に存在する「異なる官庁の管轄範囲の境界領域に存在する無法地帯」の例は以下です。
「建設業で働く人が、建設業およびその将来に対して暗く重苦しいイメージを持っている」…そのような現状は、「働き方において大事な部分が無法地帯化している」というのも理由ではないかと思います。