【社内研修】コンストラクションマネージャ研修(前期) - 事故と災害
事故
意外なことに、労働安全衛生法や労働安全衛生規則に、事故という単語そのものの定義についての言及はありません。今回のコンストラクションマネージャ研修(前期)で用いられたテキストには、「人と物とが衝突することを事故という」と記載されていました。私個人としては、「何らかの要因により発生した、定常状態からの許容されぬ逸脱」のことであると考えています。
事故と後述する災害とは、通俗的には混同される場合が多いです。しかしながら、労働安全衛生の世界においては、事故と災害は明確に区別されています。テキストにあった「事故は必ずしも災害を伴うものではなく、むしろ災害に至らない事故のほうがはるかに多い」という趣旨の記載にも、そのような態度が表れています。
思ったのですが、メンタルヘルス案件につながるような逸脱状態も事故に含まれるのでしょうか。例えば、以下のような事態についてです。
- 労働者の健康を害するほどの、恒常化した長時間労働
- ハラスメント行為が継続して行われる状況
災害
労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。
労働安全衛生法における労働災害の定義は上述の通りです。見ての通り、人的災害のみが労働災害に含まれています。しかしながら、安全品質の現場においては、設備・機械・資材・業務等の損失たる物的災害も災害に含めて管理の対象とされています。
災害連鎖
- 間接原因
- 直接原因 - 不安全行動・不安全状態
- 事故
- 災害
テキストによれば、「災害は以上箇条書きの連鎖で発生する。大切なのは、災害連鎖を根本から、間接原因から断ち切ること」であるそうです。
事例…エールフランス447便墜落事故の災害連鎖
メーデー民の間で有名な「エールフランス447便墜落事故」においては、以下のような災害連鎖があったと考えられます。
間接原因
- 機長が休息に入り、副操縦士と副操縦士資格の交代パイロットのペアでの乗務となった
- 特に副操縦士は、失速からの回復という基礎的スキルを欠くほどに訓練不十分であった
- 航空機のハイテク化が進み、不十分な教育訓練でも乗務が成り立つようになった
- エールフランスの教育訓練プログラムに不備があり、以下の教育訓練が不十分であった
- 計器が誤った値を示した場合の対処法
- 手動操縦による失速からの回復機動
- エアバスの操縦システムでは、両操縦席の操縦桿の動きが連動しない
- 機内での役割分担について十分な合意がなされていなかった
直接原因
- ピトー管の不具合
- 速度計が誤った値を示すようになった
- 自動操縦ができなくなった
- 副操縦士が失速しているのに操縦桿を引き続けた
- 失速警報のアラームが鳴り響いていた
- 交代パイロットが、副操縦士が操縦桿を引き続けていることに気が付かなかった
- 機長が、事態が手遅れになるまで対処できなかった
事故
- エールフランス447便、失速状態から脱することができないまま、大西洋上に墜落