前書き
「転勤」というものに対する世の中の考え方の変化が進んでいます。 「転勤は人権侵害」「制度としての転勤を原則廃止」といった考え方も、NHKでも以下のような特集が組まれる程度には定着してきました。
しかしながら、職務の性質上、どうしても転勤がなくならないであろう仕事も存在します。 その典型的なものの一つが「全国展開の建設業の施工管理職」です。 私は、「民間セクターにおいて、最後まで転勤がなくならないのはこの職種であろう」と考えています。
全国展開の建設業の施工管理職は、なぜ転勤がなくならないのか。この記事で書いていきます。
一つ一つの仕事が、本質的に「終わりがある」ものである
建設業というのは、典型的な請負型産業です。 「請負」というのは、「仕事を完成させることによって対価を得る」という役務提供契約です。 なので、建設業において収益を得るための仕事一つ一つは、本質的に「終わりがある」性格の仕事である…ということになります。
どこで案件が発生するかわからず、案件ごとに現地に人を送り込まなければならない
建設業というのは、受注産業かつ移動型産業です。
受注産業というのは、「他者による発注がなければ仕事ができない」という性質があります。 しかも、発注動向は常に一定というわけではなく、発生地域・発生量ともに時々刻々変化していくものです。
一方の移動型産業というのは、「現地でなければ仕事を進めることができない」ということを意味します。 現場で直接作業にあたる人員、プロジェクト管理を行う人員、いずれも現地に行かなければなりません。
前述「本質的に『終わりがある仕事』」も含め、以上のような性質により、全国展開の建設業の施工管理職は、どうしても「竣工ごとに勤務地ガチャ」となるのが避けられません。
結語
以下のような理由により、「現場で直接作業にあたる人員」を指して「若者の建設業離れ」とよく言及されるのが今のご時世です。
- 休日の少なさ
- 業務の危険有害性に見合わない低待遇
一方で、管理側においても「若者の建設業離れ」が進んでいます。その理由としてよく指摘されるのは以下です。
- 常態化している長時間労働
- 休日の少なさ
「管理側における若者の建設業離れ」というのは、上記に加えて、「全国展開している企業の場合、職務の性質上、転勤が避けられない」というのも大きな理由の一つであろうと思います。
現在進行で進み続ける「若者が考える理想のライフスタイル」と「建設業の事業性質」との乖離。 その帰結としての「若者の建設業離れ」という流れ。もう止まることはないのでしょうか。