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上記文献「請負労働の法政策(濱口桂一郎、電機連合NAVI 2007年3月号 原稿)」の内容から、自分がまとめたり考えたりしたことを起こしてみた記事です。
親方請負制とは
親方請負制というのは明治期の工場労働において一般的であった労働形態です。より具体的には以下のようなスキームで構成されていました。
- 親方職工が工場主から仕事をまとめて請け負う
- 親方職工が工場主から受けた仕事を、部下の職工や徒弟に作業させる
- 親方職工の部下の職工と徒弟の賃金は親方職工を通じて配分される
親方職工制は、「制度上は請負だが、同時に親方職工もまた工場主に雇われた職工であった」いうのが大きな特徴です。現代の労働法制・職業安定法制においては、「請負契約であるから雇用契約ではない」という二分法が暗黙の前提となっていますが、親方職工制というのは、そのような二分法が全く通用しない世界だったのは明らかです。
現代建設業と親方請負制
現代の建設業における重層下請構造は、実態として明治以来の親方請負制と大きくは変わらないものであると思います。末端の事業者、とりわけ「一人親方と称されるような個人事業主」や「零細規模の事業主」の提供しているものは、実質的には単純労働とほぼ変わらないものです1 そのような前近代的な構造を残す労務提供の実態は、戦後に整備された法制度、とりわけ職業安定法制とは相いれないものです。
以下は、適正な業務請負の定義について定めた、職業安定法施行規則第4条第2項第1号~第4号の規定です。
- 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上の全ての責任を負うものであること。
- 作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
- 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定された全ての義務を負うものであること。
- 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
建設業の現状と法制度は全くかけ離れたものとなっていることが、法制度、特に職業安定法制から見て建設業がアンタッチャブルな存在とされる2に至った原因ではないかと思います。
- 全建総連加盟組合のような「建設一人親方・零細事業主を主として構成される労働組合」は、「一人親方と称されるような個人事業主や零細事業主が労働者として処遇されること、労働法が完全に適用されること」を求めています。「事業主サイドに属する者が、自らが労働者として処遇されることを求める」というのは、アジャイル開発のような「本来の意味での業務請負」が成り立っている世界から見れば信じられない話です。↩
- 建設業と労働者派遣法の関係について、「現実に重層的な下請関係の下に業務処理が行われている中で、 建設労働者の雇用の改善等に関する法律により、労働者を雇用する者と指揮命令する者が一致する請負という形態となるよう雇用関係の明確化、雇用管理の近代化等の雇用改善を図るための措置が講じられており、労働者派遣事業という新たな労働力需給調整システムを導入することは、建設労働者の雇用改善を図る上で、かえって悪影響を及ぼすこととなり適当ではない」(高梨昌「詳解労働者派遣(日本労働協会 1985年)」)と、「前近代性を色濃く残す重層下請構造が存在する、まさにそれを理由として、労働者派遣法の適用対象外とされた」と解釈できる趣旨の記述が、1985年時点で存在しています。↩