today::エンジニアに憧れる非エンジニア

今のところは、エンジニアとは言えないところの職種です。しかしエンジニア的なものの考え方に興味津津。

ランプサム契約考

ランプサム契約とは

「事前に全ての仕様を決定し、総額のみで価格契約する」という形態の請負契約を指します。英語の「lump sum contract」をそのまま日本語化したものです。日本語では「総価請負契約」「一式請負契約」「総価一式請負契約」などと称されます。日本において単に「請負契約」と称される場合、暗黙的にランプサム契約が想定される場合が一般的です。

ランプサム契約は請負契約の一種なので、受注側は契約に定められた仕事を完成させる義務を負います。

なお、ランプサム契約以外の請負契約の形態としては、「コストプラスフィー契約(コストレインバース契約・実費精算契約)」「ターゲットコスト契約(目標コスト契約)」等があります。

ランプサム契約の問題点

「まずやってみる、小規模からやってみる」というビジネスの進め方が求められる現代にあっては、「ランプサム契約は、アジャイルな仕事の進め方とは致命的に相性が悪い」というのが大きな問題であると思います。

また、ランプサム契約は、以下の記事で言及している「受発注の関係性」が先鋭化しやすいのも大きな問題です。

rapidliner0.hatenablog.com

成果物を事前に定義しなければならない

ランプサム契約は「事前に全ての仕様を決定し、総額のみで価格契約する」という契約形態です。アジャイルな仕事の進め方は、事前に全ての仕様を決定できないゆえに採用される仕事の進め方です。この時点で致命的に相性が悪いのは明らかですね。

また、ランプサム契約を含む請負契約においては、「何をもって仕事の完成とするか」を事前に定義しなければなりません。受注側は「完成させられなければ債務不履行責任を負う」という前提があるので、どうしても「自らの責務を軽くする方向に完成の定義を持っていく」という方向性に走りがちです。「完成の定義をめぐる駆け引き」が行われると、発注者・受注者の関係は、アジャイルな仕事の進め方で重んじられる「共創・協働」からはほど遠いものとなってしまいます。

発注者から見て、プロジェクトがブラックボックス化する

ランプサム契約は「総額のみで価格契約する」という契約形態です。そのため、受注者がプロジェクトをどう進めているかは、どうしてもブラックボックスになってしまいます。「プロジェクトが発注側から見てブラックボックス化している」という状況だと、受注者は「発注者を出し抜き、自らが超過利潤を得る」という方向性に走ってしまうものです。これまた「発注者と受注者の共創・協働」からプロジェクトを遠ざける大きな要素です。

受注者がリスク回避に走らざるを得ない

ランプサム契約は、「受注者が負うリスク込みで価格契約する」という契約形態です。受注側は、リスクを回避することによって自らの儲けを増やすことができます。その結果、受注者は「あらゆる手段でリスクを回避することにより、自らが超過利潤を得る」という方向性に走ってしまいます。受注者のリスク回避手段としては、「発注者にリスクを押し付ける」というものもあります。受注者が発注者にリスクを押し付ける…当然、「発注者と受注者の共創・協働」からプロジェクトを遠ざける大きな要素の一つですね。

発注側も追加負担を回避しようとする

発注者にとってのランプサム契約の最大のメリットは、「契約締結時点で金額を決定できる」という点でしょう。合理的判断ができる発注者が、当該メリットを自ら捨てる方向に動くのは非常に考えづらいです。ゆえに、発注側も追加負担を回避しようとするのです。

まとめ

  • ランプサム契約は、「事前に全ての仕様を決定し、総額のみで価格契約する」という形態の請負契約を指す
  • ランプサム契約の場合、発注者と受注者が対立関係になりやすい
    • ランプサム契約は、「発注者と受注者の共創・協働」を阻害する要因が多く含まれる契約形態である