概要
2021年4月28日に行われたssmonline #9の発表内容・感想のまとめです。
ウォーターフォールとアジャイルの関係性についての真実
ウォーターフォールとアジャイルは、別に二律背反的な対立関係にある概念ではありません。一方で、とかく対立概念と捉えられやすい概念の組であるのは事実です。対立概念と捉えられる理由としては以下が思い当たります。
「ウォーターフォールとアジャイルは、二律背反的な対立関係にある概念ではない」…この考え方は、沢渡あまね氏(当日のパネリストの一人)・新井剛氏共著「ここはウォーターフォール市、アジャイル町」という書籍タイトルにも込められた考え方であろうと認識しています。
ウォーターフォール型組織設計の必要性
個人的には、ウォーターフォール型組織設計が必要となる理由は、以下2点が主なものではないかと考えています。
- 「組織理念」「解決すべき社会課題」を実際の事業計画・事業活動に落とし込むため
- 事業活動の抽象と具象を結びつけるため
「事業活動の抽象と具象」は、具体的には以下のように定義されると考えています。
- 事業活動という概念全体に当てはまる抽象
- 組織理念の達成
- 社会的課題の解決
- 個別の事業活動全体に当てはまる抽象
- 個別の事業理念
- 個別設定した解決すべき課題
- 事業活動の具象
- 実際の事業計画
- 日々の事業活動の営為
ゴール設定とその正当性
ウォーターフォール型は、「ゴールが明確に設定される」というのが大きな特徴です。ウォーターフォール型組織設計にも、当然明確なゴールの設定が必要となります。ウォーターフォール型組織設計において設定されるゴールは、具体的には以下のような要素からなるのではないでしょうか。
- 組織理念…ミッション・ビジョン・バリュー
- 解決を目指す社会課題の内容と、その解決の定義
ウォーターフォール型組織設計において設定されるゴールが正当であるかを確かめるための問いは、「そのゴール設定は、本当に理念志向・課題解決志向であると言えますか?そのゴール設定が理念志向・課題解決志向であることを、第三者が納得できるように説明できますか?」というものになるでしょう。
私見…ゴール設定と請負契約の関係について
ウォーターフォール型における「ゴールが明確に設定される」という特徴は、民法上の請負契約と親和性の高い特徴です。特に請負契約に立脚する業態の事業組織においては、「ゴールが明確に設定される」という時点で、民法上の請負契約を想起する人が出てくるかもしれません。
民法上の請負契約は、「受注者には完成された成果物を納品する義務があり、成果物に不具合があれば、受注者が債務不履行責任を問われる」という契約形態です。債務不履行責任云々という話になると、受注者が最低限の仕事だけをする方向に動いていくのは避けられません。
民法上の請負契約、特に日本で「請負契約」という語から一般にイメージされる総価一括請負契約は、仕事の進め方についてはブラックボックスとなります。そうした契約形態は、受注者が情報の非対称性によって超過利潤を得る方向に動いていくことを助長するような契約形態でもあります。
リスク回避志向の行動、情報の非対称性による超過利潤獲得の動機…いずれも事業の継続・成長を実現する上で足を引っ張る要素です。事業組織にウォーターフォール型組織設計を適用するにあたっては、「請負の限界を克服するための方法論」といったものも必要ではないかと思います。
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