概要
いわゆる「典型的日本企業」においても、典型的日本とは異なる文化的バックボーンを持つ人材の進出は加速していく…現在はそのような世の中の流れにあります。この流れは、日本における「生産年齢人口の減少」といった中長期トレンドも背景にあるため、今後も不可逆的なものなのであろうと思います。
しかしながら、文化的同質性が強い組織において、「何も準備ができていないところに急に異文化の流入が進む」という事態が進むと、不幸な文化衝突の発生はおそらく避けられません。不幸な文化衝突をできる限り避けるためには、「文化による考え方の違い」「文化によるコミュニケーションスタイルの違い」について、その存在と中身を大雑把にでも知っておく必要があろうかと思います。
この記事は、上記「文化による考え方の違い」「文化によるコミュニケーションスタイルの違い」についての備忘録として記述してみた記事です。
「ソクラテス式」と「孔子式」
「学校教育における授業形態」「ビジネスなどの場における議論」等、意見交換的な場におけるコミュニケーションスタイルの違いを大雑把に二分した概念です。
- ソクラテス式
- 積極的な双方向の意見交換が評価される
- 聞き手間の意見交換が評価される
- 相手が話している最中に話を遮ることも厭わない
- 孔子式
- 話し手と聞き手の役割分担が明確化されている
- 話し手と聞き手の立場は固定的なものである
- 相手の話は最後まで聞くものである
一般に、「欧米はソクラテス式寄り」「日本を含むアジア圏は孔子式寄り」とされているそうです。
「テトリス式」と「アメーバ式」
事業組織における、担当業務と役割分担についての考え方の違いを大雑把に二分した概念です。
- テトリス式
- 自分の担当業務に専念して専門性を上げていくことが自分の責任範囲・チームへの貢献とする
- 「ジョブ型雇用」と結びつきが深い
- アメーバ式
- 自分の責任範囲に明確な線引きをしない
- 担当業務を超えてでも組織やチームに貢献することが求められるとする
- 「メンバーシップ型雇用」と結びつきが深い
日本の事業組織は典型的な「アメーバ式組織」とされます。 下記マイナビニュースの記事では、日本の事業組織について「新卒一括採用という日本特有の採用形態に基づき、ノースキルの若者を採用するため、組織形態もアメーバ式とならざるを得ない」という趣旨の言及がなされています。
「モノクロニック」と「ポリクロニック」
時間感覚の違いを大雑把に二分した概念です。
- モノクロニック
- 「時間は一方的に、直線的に流れていく」という考え方
- 約束の時間や期日に対して厳格である
- ポリクロニック
- 「時間軸は複数存在し、それぞれの時間軸によって進むスピードは様々」という考え方
- 「終わりよければすべてよし」的に考える
一般に、「北米・欧州北部はモノクロニックな文化特性が強い」「中南米やアジア圏はポリクロニックな文化特性が強い」とされているそうです。
日本における「モノクロニック」と「ポリクロニック」
日本については、「同一文化内にモノクロニック性とポリクロニック性が混在する」といえるのではないでしょうか。 日本文化のモノクロニック性とポリクロニック性については、以下のような特徴を挙げることができます。
- 日本文化のモノクロニック性
- 日本文化のポリクロニック性
- 終業時間に対してルーズであり、残業を厭わない
- 「お客様事情」や「上司事情」といった割り込みが広く許容される
その他
このほかにも、コミュニケーションの文脈依存性についての「ハイコンテクスト・ローコンテクスト」という二分法が存在します。