today::エンジニアに憧れる非エンジニア

今のところは、エンジニアとは言えないところの職種です。しかしエンジニア的なものの考え方に興味津津。

ガントチャートとバーチャートの違い、およびバーチャートのアンチパターン

ガントチャートとバーチャートとは

ガントチャートは、「プロジェクトを構成するタスクを上下方向に並べ、横軸に進捗率または日時を取り、左右方向に線を伸ばしていく」という図面です。進捗管理のツールとして広く用いられています。

aippearnet.com

一般的には、横軸に進捗率を取るものも日時を取るものもまとめて「ガントチャート」と称されています。一方で、建設業法上の資格の一種である「○○施工管理技術検定」においては、一般的にガントチャートと総称されるものを、さらに2つに分けています。以下その定義です。

  • ガントチャート…横軸に進捗率をとるもの
  • バーチャート…横軸に日時をとるもの

普段我々が「ガントチャート」と称するものは、施工管理技術検定的には「バーチャート」を指す場合が多いです。

なお、金融・証券業界においては、バーチャートというのは全く別の概念を指します。「バーチャート」というキーワードでWeb検索をかけると、金融・証券業界におけるバーチャートが検索結果に含まれるので注意が必要です。

www.daiwa.jp

バーチャートのアンチパターン…「逆線表」と「気合線表」

バーチャートは進捗管理のツールとして大変広く用いられています。しかしながら、「バーチャートが実効性を失う事態につながるアンチパターン」も存在します。そのようなアンチパターンの中で代表的なもの2つが、「逆線表」と「気合線表」です。

「逆線表」というのは、「先に納期を決めて(往々にして決まっていて)、納期から順にタスクを割り付けていく」という作り方がなされたバーチャートを指します。一方の「気合線表」というのは、「最初から達成不可能であることが明白な、無理な期間設定がなされたバーチャート」を指します。

気合線表の有害性

www.gixo.jp

気合線表の有害性は、以下の2つであると認識しています。

  • 進捗を測定する手段がなくなる
  • スケジュールを守ろうという意識がなくなる

前者の「進捗を測定する手段がなくなる」というのは、「全く当てにならないスケジュールのみが存在する」ゆえの帰結です。後者の「スケジュールを守ろうという意識がなくなる」というのは、「最初から達成不可能であることが明らかなスケジュールである」ゆえの帰結です。

逆線表がアンチパターンである理由

kaizenproject.jp

逆線表がアンチパターンである理由は、大きく以下の2つがあると認識しています。

  • 往々にして、「何を作るのか決まっていないのに、納期だけが先に決まっている」というパターンとセットで出現するものであるため
  • 各タスクに割り当てられた期間に、多くの場合根拠がないため

上記2つはセットで出現する場合も多いです。「何を作るか決まっていないから、どのようなタスクが必要かも見当がつかない。ゆえに、タスクそのものが適当に設定されており、そこに割り当てられた時間にも当然根拠がない」といった形ですね。

新入社員研修と安全衛生教育の違い

はじめに

私の現所属企業・現所属部署における新入社員研修は、世間一般における実態と大きくずれているのではないかと考えています。どこがずれているのか、世間一般における新入社員研修とはどういったものなのか。私個人としては、「新入社員研修と安全衛生教育の違い」が核心なのではないかと考えるに至りました。

ということで、この記事では「新入社員研修と安全衛生教育の違いとは何か」というテーマについて解説を書いてみます。

現所属企業・現所属部署における新入社員研修

私自身は、この記事執筆時点において、NTT発注の電気通信工事の請負を主な事業とする企業において、NTT発注の電気通信工事の請負を行う部署に所属しています。当該部署における新入社員研修は、「新入社員研修」と言いつつ、実態としては建設業における「送り出し教育」に近いものとなっています。

「送り出し教育」とは

建設業における「送り出し教育」とは、「雇い主が実施する、現場作業に必要な知識・技能についての新規従事者向け教育」を指します。

労働安全衛生関係法令上、建設業におけるいわゆる「新規入場者教育」については、関係請負人または特定元方事業者が行うものとされています。以下、いわゆる「新規入場者教育」の法的根拠となる労働安全衛生規則第642条の3の規定です。

建設業に属する事業を行う特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われるときは、当該場所の状況(労働者に危険を生ずるおそれのある箇所の状況を含む。以下この条において同じ。)、当該場所において行われる作業相互の関係等に関し関係請負人がその労働者であつて当該場所で新たに作業に従事することとなつたものに対して周知を図ることに資するため、当該関係請負人に対し、当該周知を図るための場所の提供、当該周知を図るために使用する資料の提供等の措置を講じなければならない。ただし、当該特定元方事業者が、自ら当該関係請負人の労働者に当該場所の状況、作業相互の関係等を周知させるときは、この限りでない。

現実には、新規入場者教育は特定元方事業者自身が行う場合が多いです。「当該現場特有の危険性について最も熟知しているのは、一般的には特定元方事業者である」というのがその理由です。

「新規入場者教育は特定元方事業者が行う」となると、「じゃあ関係請負人は、自身の労働者に対し、労働安全衛生法上の安全衛生教育義務を満足するためにどのような施策を行うべきなのか」というという問題が出てきます。建設業界内部においてその答えとされている教育、それが「送り出し教育」なのです。

現所属企業・現所属部署における新入社員研修の実態

私の現所属企業・現所属部署において、新入社員研修の主な内容は以下の通りです。

  • 就業規則・福利厚生・その他待遇についての教育
  • 社内情報システムの取り扱いについての教育
  • 労働安全衛生法上、現場作業に従事する上で必要とされる各種技能講習・特別教育
    • フルハーネス型墜落制止器具
    • 玉掛け(つり上げ荷重1トン以上)
    • 高所作業車運転(作業床高さ10メートル以上)
    • 酸欠・硫化水素危険作業主任者
  • 電気通信工事の技能労働者に必要とされる各種資格の取得についての研修
  • 電気通信工事の技能習得を示すための各種資格等の取得にあたっての研修
    • 光施工技術者育成課程
    • メタル施工技術者育成課程
    • 2級情報配線施工技能士
  • NTT設備の工事を行うために必要な技能の習得についての研修
    • 情報通信エンジニアリング協会「基礎研修線路科・統合科」

もろに現場で技能労働を行うことを前提とした研修内容です。実際、現所属部署における育成方針は、「新入社員研修終了後は、新卒入社3年目終了まで、現場で技能労働者としてNTT発注建設工事に従事し経験を積む」というのが基本的な方向性となっています。

一方で、ビジネスパーソンとして必要性が高いと考えられる以下のような内容の研修は、新入社員研修としては非常に希薄です。

  • マネジメント工学
  • 戦略的思考

結果として、本項冒頭でも書いた「新入社員研修とは言うが、実態としては送り出し教育」という一言に集約できる研修内容と言えるわけです。

他社における新入社員研修の事例

他社における新入社員研修では、一般に以下のようなカリキュラムが組まれています。

  • 業務コミュニケーション
  • ロジカルシンキング
  • 企業財務・経営指標の見方
  • プレゼンテーション
  • 業種・職種に応じた特有のスキル
    • 製造業におけるQCD
    • 店舗販売業における接客行動
    • その他様々

以上のようなカリキュラムの応用として、以下のようなユニークな内容の新入社員研修を行う事例もあります。

fledge.jp

  • 幼稚園研修(自動車ディーラー)
  • 学校での出前授業(複合機等メーカー)
  • 漫才研修(中古カー・バイク用品販売チェーン)
  • 世界一の竹とんぼを作るモノづくり講座(電子部品メーカー)
  • 35kmウォーキング(タクシー)
  • 英国研修(ブリティッシュパブチェーン)

少なくとも対外的に広く知られる新入社員研修においては、「新入社員研修とは言うが、実態としては送り出し教育」というようなケースは皆無かと思います。

改めて、新入社員研修と安全衛生教育の違い

全体としては、「新入社員研修⊃安全衛生教育」ではないかと思います。「安全衛生教育は新入社員研修を構成するが、安全衛生教育が新入社員研修の全てではない」という意味です。一方で、私の現所属企業・現所属部署においては、「新入社員研修=安全衛生教育」という認識が強いのではないかと思います。

建設業は、日々「請負」という言葉の多義性に頭を抱えながら商売をする

まえがき

建設業は、請負に立脚して成立する業種です。建設業に関係する限り、「請負」という概念は業務に常に付いて回るものです。

しかしながら、建設業に関係する各種法律において、「請負」という概念は常に一つのものを指し表しているわけではありません。適用対象に応じ、「請負」という概念が何であるかは微妙ながら異なってくるのです。

建設業に従事する者は、互いに重なりつつも微妙に異なる複数の「請負」概念の違いに頭を抱えながら常日頃仕事をしています。この記事では、建設業について回る3つの「請負」概念について説明していきます。

注意

当記事は、日本国内の法令に関する解説を含みます。内容についてはできる限り正確を期していますが、内容の正確性について当記事の執筆者が責任を持つものではありません。ご自身が実際に遭遇された事件につきましては、法律関係の専門家にご相談ください。

「請負」という言葉の意味

建設業に関係する部分において、「請負」という言葉は、大きく以下の3つの意味を持ちます。

  • 民法上の典型契約としての「請負」
  • 建設業法における「建設工事の請負契約」
  • 労働法制における「請負」

民法上の典型契約としての「請負」

以下に民法632条の条文を示します。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法上の典型契約としての「請負」は、上述民法632条の内容がその定義となります。大雑把には、以下の2つの義務関係から成る典型契約であることを意味します。

  • 当事者の一方がある仕事を完成することを約する
  • 相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する

建設業法における「建設工事の請負契約」

以下に建設業法第2条の条文を示します。

1 この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう。
2 この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。
3 この法律において「建設業者」とは、第三条第一項の許可を受けて建設業を営む者をいう。
4 この法律において「下請契約」とは、建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいう。
5 この法律において「発注者」とは、建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者をいい、「元請負人」とは、下請契約における注文者で建設業者であるものをいい、「下請負人」とは、下請契約における請負人をいう。

以下は、「建設工事の請負契約」の建設業法における初出である同法第18条の条文です。同法第19条以降にも、特に断りなしに「建設工事の請負契約」という語句が登場します。

建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。

第18条までの建設業法において、「建設工事の請負契約」そのものについての定義はなされていません。しかしながら、建設業法第2条の条文から、「建設工事の請負契約」は「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う契約」であると読むことができます。

建設業法における「建設工事の請負契約」は、民法上の請負契約であるとは限りません。例えば、後述する「オペレーター付きリース契約」が建設現場に対して行われた場合、民法上は非典型契約の一種である「リース契約」に該当する一方、建設業法上は「建設工事の請負契約」に該当するとされます1

労働法制における「請負」

以下に労働安全衛生法第15条第1項2の条文を示します。

事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。

上記労働安全衛生法第15条第1項において、労働法制における「請負」に関係する以下の概念が定義されています。

  • 元方事業者
    • 一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの
  • 特定元方事業者
    • 元方事業者のうち、建設業その他政令で定める業種3に属する事業を行うもの
  • 関係請負人
    • 元方事業者の事業の仕事の一部を請け負っている請負人

以降、労働法制上における元方事業者と関係請負人の関係性については、「元方事業者と関係請負人」という言葉を用いて言及することとします。

労働安全衛生法においては、「請負人」の定義そのものはなされていません。個人的には、「労働安全衛生法における『請負人』の定義は、民法上の請負契約が暗黙に前提とされており、実際そうである場合が多い。民法上の請負契約でなければ、労働安全衛生法における『元方事業者と関係請負人』の関係について問題が発生する場合がある4。」と認識しています。

「請負」という言葉の多義性の露頭…オペレーター付きリース契約

「建設現場に対する、建設機械等のオペレーター付きリース契約」というのは、その契約の性質により、「『請負』という言葉の多義性に関する問題」が一気に表面化する場になります。具体的には、以下のような事態が発生するわけです。

  • オペレーター付きリース契約は、民法上の請負契約ではない
    • 非典型契約の一種であるリース契約に該当する
  • オペレーター付きリース契約は、建設業法上の「建設工事の請負契約」である
  • オペレーター付きリース契約は、労働法制上の「元方事業者と関係請負人」という関係性には該当しない

労働法制における位置づけについては、少々込み入った話になるため、以下追加で説明します。

オペレーター付きリース契約は、労働法制上の「元方事業者と関係請負人」という関係性には該当しない

労働安全衛生法第33条には、「機械等貸与者等の講ずべき措置等」として、以下の規定が設けられています。

1 機械等で、政令で定めるものを他の事業者に貸与する者で、厚生労働省令で定めるもの(以下「機械等貸与者」という。)は、当該機械等の貸与を受けた事業者の事業場における当該機械等による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 機械等貸与者から機械等の貸与を受けた者は、当該機械等を操作する者がその使用する労働者でないときは、当該機械等の操作による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
3 前項の機械等を操作する者は、機械等の貸与を受けた者が同項の規定により講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。

逆に言えば、以下のような帰結をも意味するわけです。

  • オペレーター付きリース契約における機械等の借り主は、労働安全衛生法第33条に定められた義務を果たせば、労働安全衛生法に定められた責任は果たしたと解される
  • オペレーター付きリース契約に対しては、労働安全衛生法上の「元方事業者と関係請負人」という関係性には該当しない

厚生労働省通達「建設業における総合的労働災害防止対策の推進について(基発第0322002号 平成19年3月22日)」の別添資料2「建設業における労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置」においても、「リース業者等に係る措置の充実」については、以下のように記載されています。

リース業者が貸与する機械設備については、そのリース業者の責任において、当該機械設備の点検整備等の管理を行うとともに、貸与を受けた事業者においても十分なチェックを行う体制を整備すること。なお、移動式クレーン等をリースする業者であって自らの労働者がリース先の建設現場において移動式クレーン等を操作するものについては、法第33条第1項の措置とともに、事業者としてクレーン等安全規則等に定められた措置を講ずること。

オペレーター付きリース契約に関する「移動式クレーン等をリースする業者であって自らの労働者がリース先の建設現場において移動式クレーン等を操作するものについては、…事業者として」という記述は、「労働安全衛生法に定める事業者責任を負うのはリース会社である(=さらには、借り主は事業者責任を負わない)」と解釈するのが妥当と思われます。

上述の帰結について、菊一功氏5は、著書偽装請負 労働安全衛生法と建設業法の接点にて以下のように述べています。

元請等からオペレータへの作業指示をもって労働者派遣法を適用し、派遣先としての事業者責任を問うことは、罪刑法定主義に反することになる。

結語

建設業においては、その事業の根幹をなす概念である「請負」が、「同じ語句でありながら、微妙に異なった複数の定義が存在する概念」となっています。それゆえに、建設業に従事する者は、日々「請負」という言葉の多義性に頭を抱えながら商売をしているのです。このような解釈問題は、存在するより存在しないほうが望ましいです。皆さんも、特に仕事上で新たな概念を定義する際には、「概念の意味は明確で単一の定義となること」を意識する必要があるかと思います。


  1. 少なくとも、国土交通省及び公共工事発注者においては、「建設現場に対するオペレーター付きリース契約は、建設工事の請負契約である」という解釈が一般的であるようです。建設機械のオペレーター付きリース契約は建設工事に該当しますか?-兵庫県
  2. 労働安全衛生法第15条第1項は、統括安全衛生責任者の選任義務・職務について定めた条文です。
  3. 政令で定める特定事業には、2021年8月現在では造船業が該当します。
  4. CM方式による安全管理に関する研究(高木元也・小林康昭・花安繁郎・吉田圭佑)によれば、「エージェンシー型CMでは、CMRは発注者と業務委託契約(筆者補足…民法上準委任契約)を結ぶ」「CM方式が採用されたとき、CMRが直接の請負関係を持たない建設業者に対して、統括安全管理を行いうるかが不明確である」という問題があるとされます。
  5. みなとみらい労働法務事務所所長・特定社会保険労務士・元労働基準監督官

2021-05-20 ssmonline - 意外と知らない!? 失業保険の話(ぐご氏)

概要

www.slideshare.net

  • 一般に「失業保険」と称されているもの、実際には「雇用保険」という名前である
    • タイトルに「失業保険」という名前を使ったものの…
  • 雇用保険の本質は「次なる就労に向けた軍資金」である
    • 決して「失業期間中の生活費の補填」ではない
  • いわゆる「会社都合退職」について
    • 「会社都合退職」は、制度上正式に定義されている概念ではない
    • 制度上正式に定義されている概念は、「特定受給資格者」と「特定理由離職者」である
  • 「失業…働く意志や能力があるにも関わらず、就職できない状態」の具体的定義は、意外なほど厳しいものである

特定受給資格者・特定理由離職者の要件についての言及

  • いわゆる「会社都合退職」について
  • 倒産に伴う離職者は、特定受給資格者として認められる
  • 賃金の未払いによる離職者は、特定受給資格者として認められる
  • 過度の時間外労働による離職者は、特定受給資格者として認められる
    • いずれか連続する3ヶ月で45時間以上の時間外労働
    • いずれか1ヶ月で100時間以上の時間外労働
    • 補足…いずれか連続する2ヶ月で、1ヶ月平均80時間以上の時間外労働
  • 以下の理由により通勤不可能・通勤困難となったことによる離職者は、特定理由離職者として認められる
    • 結婚に伴う住所の変更
    • 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
    • 補足…配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 - ハローワークインターネットサービス

意外に厳しい「失業」の定義

  • 失業の基本的な定義
    • 働く意思や能力がある
    • ↑にも関わらず、就職できない状態である
  • 「病気やケガですぐに働けない」という場合は、雇用保険(基本手当)の対象とはならない
    • 補足…代わりに雇用保険(傷病手当)の対象となる可能性がある
  • 「働く意思がある」という言葉には、想像より厳しいであろう形式的定義が存在する
    • 「求職活動の実績」が一定以上必要となる
      • 求人広告であれば、閲覧のみでは足りず、実際に求人に応募した実績が必要
      • 民間の職業相談や個別相談可能な企業説明会への参加等も実績として認められる
    • 「求職活動の実績」等について、ハローワークに報告する必要がある
      • 「失業認定申告書」を記入・提出する必要がある
  • 補足…「働く」という語は、暗黙的に「労働基準法適用の労働者として」という前提がつく
    • 個人事業主として事業を開始した場合、雇用保険の受給資格を失う
      • 「働く意思がない」と判断される
      • 逆に「かつて労働者であった者が個人事業を廃業し、労働者に戻る」という場合は、雇用保険の受給対象となるケースがある
    • ボランティアに従事した場合、ハローワークに申告しなければならない
      • 補足…「就職活動を行えなかった日」として申告が必要
      • 補足…有償のボランティアに従事した場合、雇用保険基本手当の支給額は減額される

paranavi.jp

2021-05-20 ssmonline - 手順書の書き方LT - お前らの手順書の書き方は間違えている(@nlog2n2氏)

概要

www.slideshare.net

  • 補足…「運用現場で用いる、主としてシェルスクリプトで記述される手順」を対象としている
    • 説明なしで「手順書」という語を使うには大げさな主題と感じた
  • ITエンジニアが作る「手順書」は、説明不足も甚だしい事例が多く存在する
    • 特にアプリケーションエンジニアが作る手順書に甚だしい説明不足の事例が多い
  • では、「一般的な運用現場のエンジニアが、その内容を理解できる」ような手順書を書くには、何に気をつければよいのか

説明不足も甚だしい手順書の事例(発表内容より)

tar -zxvf 20211231.tar.gz
cd 20211231
./bin/release.sh
cat ./log/release.log # (successと出てきたらOK)

↑説明不足な点は何か、自分でも考えてみよう1

手順書を書くときの基本方針(@nlog2n2氏提唱)

  • 作業ログを残す準備をする
    • ターミナルアプリのログ記録機能を使う
    • ターミナル画面を動画で記録する
  • 日本語で作業内容を書く
    • メンテナンス計画書…技術的な事柄は書かない
    • メンテナンス手順書…技術的な事柄も書く
  • 作業内容を共有できる項番を付ける
    • 主たる目的:作業報告時にどの作業であるかの報告を容易にするため
    • 副次的目的:手順書をそれっぽい体裁に見せるため
  • どこで何をしたか分かるように書く
    • 誰がどこにログインするかを明記する
    • 絶対パスで書く2
    • ユーザー、権限周りは事前に確認する
    • 前後の確認はawkgrepdiff等を有効に活用する
    • ダイイングメッセージ性のあるコマンドを使う
    • 手順書を作るシェルを書く

「ダイイングメッセージ性のあるコマンド」とは

  • 「ダイイングメッセージ性」…とてもエモい表現!
  • 私の解釈
    • historyをたどっていくことで、手順の全てを遡ることができる」という条件を満たしたコマンド群
    • 手順書作者が消滅したとしても、別の誰かが手順を追うことができるコマンド群
    • 「ロールフォワード」という概念と深い関係がありそう
  • 具体的には何を指しているのか
    • スクリーンエディタなどで設定ファイルを編集してはいけない
      • historyで変更内容を追うことができなくなるため
    • sedechotouchなどの実行結果をつなげて記述していく
      • これらの実行結果であれば、historyで変更内容を追うことができる

  1. 説明不足な点としては、例えば「カレントディレクトリはどこか」「どのユーザーアカウントで実行するのか」「必要な権限は何か」「./log/release.logの中身に、success以外の文字列があったらどうすればよいのか」等を挙げることができます。

  2. Windowsの場合、「ドライブ」という概念の存在ゆえに、「絶対パスが環境に依存する場合がある」というつらみがあります。特にリムーバブルメディアが絡む場合につらいです。

ssmonline #9 ~これからの時代の事業組織の話をしよう - ツリー型組織考

概要

2021年4月28日に行われたssmonline #9の発表内容・感想のまとめです。

speakerdeck.com

ツリー型組織の弊害

ツリー型組織の弊害について、波田野裕一氏は以下2点を指摘していました。

  • コミュニケーションコストが増大しやすい
  • こと日本においては、封建的身分制度につながりやすい

コミュニケーションの系統までツリー型組織を適用してしまうと、コミュニケーションコストが必要以上に増大することが避けられません。具体的には、「プロジェクトチーム単位の組織とプロジェクトチーム単位の組織が話をするのでも、セクションが違う組織同士の場合、トップマネジメントを通さないと話ができない」というような形となって現れる問題です。

封建的身分制度波田野氏の発表においては、「殿様・家老・奉行・侍大将・足軽」と言及されていました。そもそもツリー型組織における職位の違いは、役割の違いであって身分の違いではないはずです。しかしながら、こと日本においては、ツリー型組織における職位の違いが身分の違いとして扱われるケースが跡を絶ちません。私個人としては、このようになってしまう理由として、おそらく「旧来日本型の人事制度において、ツリー型組織における職位システムは、事業組織内部で従業員の権力欲求を消化させるためのツールとしても用いられてきた」という歴史的経緯が大きく影響していると思います。

以下は、権力欲求を含む「マクレランドの欲求理論」についての説明記事です。

mitsucari.com

ツリー型組織が必要な場面…経営管理としての組織構造

事業組織というのは、多種多様なリソースを運用する主体です。実際に事業組織が運用するリソースの具体例は以下です。

  • 当該事業組織そのものの従業員
  • 生産設備、その他有形・無形の物的資産
  • キャッシュ、ファイナンス等の金融能力
  • 外部ステークホルダーとのコミュニケーション能力

事業組織が多種多様なリソースを運用し、外部のステークホルダーとの関係も時々刻々変化していく中で、全体整合・全体最適なリソース運用を実現することは容易ではありません。それこそ「適切な権限委譲」「全体整合・全体最適を実現するための調整機構の存在」が必要になる類の活動です。経営管理としての組織構造にツリー構造が必要となる理由は、その点にあるのではないでしょうか。以下、「全体整合・全体最適なリソース運用」のさらに具体的な例を挙げていきます。

  • 事業部レベルの判断でベンチャーキャピタルから資金を引っ張ってくる決定をするのは不合理であろう
  • 事業部レベルの判断で事業組織全体の意向に反する外部発表が行われるのは避けられなければならない
  • 法的・社会的・事業組織的にやばい施策を止めるための主体を機能させる必要がある

これからのツリー型組織に必要なこと

波田野氏の発表では、以下の3点の言及がなされていました。

  • 現場同士で直接コミュニケーションができること
  • 経営層が現場に適切な権限委譲を行なうこと
  • 役割の違いを身分の違いと捉えないこと

波田野氏の言及にもあった「業務コミュニケーションがネットワーク構造」というのは、私としても、「コミュニケーションコストの増大を食い止めるために必要な考え方」であろうと思います。

逆ツリー構造

ツリー型組織の弊害を克服する一アプローチとして、波田野氏は「逆ツリー構造」について言及していました。

www.7andi.com

上記リンクは、セブン&アイホールディングスの組織構成図です。同社の組織構成図は、「お客様を一番上に、次いでステークホルダー、事業会社、現場部署、統括部署…と続き、株主を一番下に置く」という逆ツリー構造で描かれています。

波田野氏によれば、ツリー構造はサッカーのフォーメーションにたとえることができるそうです。具体的には以下のようなイメージです。

ssmonline #9 ~これからの時代の事業組織の話をしよう - ウォーターフォール型組織設計考

概要

2021年4月28日に行われたssmonline #9の発表内容・感想のまとめです。

speakerdeck.com

ウォーターフォールアジャイルの関係性についての真実

ウォーターフォールアジャイルは、別に二律背反的な対立関係にある概念ではありません。一方で、とかく対立概念と捉えられやすい概念の組であるのは事実です。対立概念と捉えられる理由としては以下が思い当たります。

ウォーターフォールアジャイルは、二律背反的な対立関係にある概念ではない」…この考え方は、沢渡あまね氏(当日のパネリストの一人)・新井剛氏共著「ここはウォーターフォール市、アジャイル町」という書籍タイトルにも込められた考え方であろうと認識しています。

ウォーターフォール型組織設計の必要性

個人的には、ウォーターフォール型組織設計が必要となる理由は、以下2点が主なものではないかと考えています。

  • 「組織理念」「解決すべき社会課題」を実際の事業計画・事業活動に落とし込むため
  • 事業活動の抽象と具象を結びつけるため

「事業活動の抽象と具象」は、具体的には以下のように定義されると考えています。

  • 事業活動という概念全体に当てはまる抽象
    • 組織理念の達成
    • 社会的課題の解決
  • 個別の事業活動全体に当てはまる抽象
    • 個別の事業理念
    • 個別設定した解決すべき課題
  • 事業活動の具象
    • 実際の事業計画
    • 日々の事業活動の営為

ゴール設定とその正当性

ウォーターフォール型は、「ゴールが明確に設定される」というのが大きな特徴です。ウォーターフォール型組織設計にも、当然明確なゴールの設定が必要となります。ウォーターフォール型組織設計において設定されるゴールは、具体的には以下のような要素からなるのではないでしょうか。

  • 組織理念…ミッション・ビジョン・バリュー
  • 解決を目指す社会課題の内容と、その解決の定義

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ウォーターフォール型組織設計において設定されるゴールが正当であるかを確かめるための問いは、「そのゴール設定は、本当に理念志向・課題解決志向であると言えますか?そのゴール設定が理念志向・課題解決志向であることを、第三者が納得できるように説明できますか?」というものになるでしょう。

私見…ゴール設定と請負契約の関係について

ウォーターフォール型における「ゴールが明確に設定される」という特徴は、民法上の請負契約と親和性の高い特徴です。特に請負契約に立脚する業態の事業組織においては、「ゴールが明確に設定される」という時点で、民法上の請負契約を想起する人が出てくるかもしれません。

民法上の請負契約は、「受注者には完成された成果物を納品する義務があり、成果物に不具合があれば、受注者が債務不履行責任を問われる」という契約形態です。債務不履行責任云々という話になると、受注者が最低限の仕事だけをする方向に動いていくのは避けられません。

民法上の請負契約、特に日本で「請負契約」という語から一般にイメージされる総価一括請負契約は、仕事の進め方についてはブラックボックスとなります。そうした契約形態は、受注者が情報の非対称性によって超過利潤を得る方向に動いていくことを助長するような契約形態でもあります。

リスク回避志向の行動、情報の非対称性による超過利潤獲得の動機…いずれも事業の継続・成長を実現する上で足を引っ張る要素です。事業組織にウォーターフォール型組織設計を適用するにあたっては、「請負の限界を克服するための方法論」といったものも必要ではないかと思います。

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